2023年上半期の歌ってみたのハイライトをリストにまとめた。およそ150曲あるが、毎日平均15個くらいはチェックしつつ、曲によっては全ての歌ってみたをチェックするようなことを半年近く続けてきたわけで、これだけ絞れば充分ではないかと思っている。もとは300個以上あったのだし……。 つくづく実感したこととしては、歌みたの良し悪しに登録者数は全く関係がない。登録者数の多い人気の歌い手が味気ないカバーを出すことなんていくらでもあるし、登録二桁の歌い手が他の誰よりも輝きを放っていたりする。伸びるかどうかは歌以外の部分、すなわちSNS上での発信や配信活動の有無、投稿頻度、カバー対象がトレンドに乗っかっているかどうかなどに大きく左右されるため、結局のところは全部探し出して聴くことだけが正解となる。
リストだけ作ってSNSにツイートして終わりというのも味気ないので、見つけた歌い手のうち期待できそうな人を以下に並べる。2022年から知っていた人や知名度の高そうな人はここには書かないのでリストで聴いてもらえればと思う。敬称略。
Fwiyu*
「ふぃゆ」と読むらしい。幼げで可憐な歌声ながらビブラートや音程・発声のコントロールのレベルが群を抜いている。この曲は私も知らなかったが、歌い手を追う上で曲を知っているか知らないかは正直問題ではない。結局は"サウンド"が良いか悪いかに終始するのだから、聴いてフィット感と新規性を感じるかどうかが全てである。
春原染
「すのはらせん」で合っているのだろうか(インスタのプロフィールにはそう書いてある)。10代的な線の細さを強く感じる声の震えが特徴の歌い手。「忘れてやらない」という楽曲をここまで自然体で自分のものにして歌えるのはこの人くらいだろう。いかにも邦ロックを指向し、かつ声優として高いレベルにある歌唱表現をこなす長谷川育美さんには逆に不可能な表現が達成されている。
この人は『異星にいこうね』もかなり良い。
6/27追記:後から知ったのだが、春原さんはバンド『帰りの会』のボーカルとのこと。こちらの方では中性的で落ち着いた歌唱が聴ける。
小鶴おと
「こつるおと」。私も今調べて知った。
中岡しゆうが中心となって2022年に立ち上げた歌い手グループ「みるきす」のメンバー。軽やかで幼い歌声の歌い手。こういった歌声の人が歌うことで楽曲のアイロニックな色が無化され、ダンサブルな色が前に出てくる。サビの躍動的な歌唱と独特なハーモニーが特に印象的。
伊野咲りの
「いのさきりの」。吐息の多い可憐な歌声が特徴。このSOSという曲は#シャニマス歌ってみたで引っ掛かる分は全部聴いた限りでは原曲だけが正解を叩き出しているが、別解と言い得るものがあるとすればこの人の歌唱だろうと思った。全体的に原曲の表現の要所を押さえていて好印象なのだが、特に「好きのテレパシー」の「パ」を「ぱぁ」と歌っているところが声質と合わさって高い強度を獲得しているように感じた。
sqme
発音や発声の安定感に加えて、多彩な歌唱表現を見せつつ、全体では一人のシンガーとしてトーンが統一されているという異常にレベルの高い歌い手。ディナーベルはバックトラックのエレクトロのビートが16分の刻みで下降するメロディラインと絡み合ってグルーヴしている上、サビでは起伏の少ないメロディで切実な孤独を表現しなければならない高難易度の楽曲だが、この人はそれをさらっとやってのけた上にシンガーとしての個性を示すことに成功している。今後が楽しみ。
うれは
ひんやりとした手触りの歌唱で、ざらついた低音が特徴的な歌い手。シンガーとしての特質を失わずに低音まで出る人というのは少ないので嬉しい。ディナーベルという楽曲とのマッチ度が高い。
mea
今一番推している歌い手。DUSTCELLのEMAフォロワーとひとまずは言うことができる("Dirtyspring"のカバー動画の概要欄に記載がある)のだが、可憐ながらも歌唱に特有のアンニュイさがあり、歌い始めた瞬間に抗いがたく引き込まれてしまう。
しかし声質だけということはなく、現在の最新作では四つ打ち・トラップのビートの上で巧みにグルーヴするスキルも見せている。
無職うどんパスタ
やや上擦った張り詰めた歌声が特徴の歌い手。『生活は簡単じゃないね』はアンニュイなエモに全振りしつつも全体はアッパーに整えられた高音域の要素の多い楽曲であるが、そのサウンドに負けないくらい情緒不安定に上振れた高音の歌唱が印象的だった。
2023年下半期も積極的に歌い手をディグしていきたい。