雑記

__blurry_のおぼえがき

9/13

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雑感

定め

 自分の中で明確に「こういう音が聴きたい」というものが一つ定まり、そこに合致する音を手持ちの音の中から掘り出すことにここ数日の時間を費やしている。

 全然欲しい音は見つからないのだが、こうやって軸を一つ定めることで音楽を聴く態度は明確に変わった。普段は「良ければ何でも聴く」という態度で幅広いジャンルを聴き漁っているのだが、良くも悪くも何となく気持ちいいかどうかだけを判断する漫然とした聴取になっていたように感じる。しかし、一つの価値観に一旦絞ってみることで、聴いている音がそこに合致するかどうかを厳しくジャッジするため、以前よりも聴取の集中力はむしろ上がったし、「もしかしたら自分が理解できないだけで未知の魅力があるのかもしれない……」などと判断を留保することもなくなった。良くないものは全然良くないし、良いと思っても今は全然求めていない時はさっさとスルーできる。
 「全部理解しようとする」態度はとても尊いが、それは規範化してしまった時点で意味がない。まずは自分の好みを知って、その好みに合う音を充分に楽しむことが大事だなと思った。次に進むのはそこに飽きてからで全然構わない。その方が結果として音の理解度が高まるということもあるだろう。

最近の歌みた

 最近「歌ってみた」動画を漁ることにハマっている。正直歌い手のことをアマチュアだと思っていた時期もあったのだが、プロフェッショナル/メジャーの領域では決して得られない未成の質感、異様なサウンドに惹かれて聴き始めたら止まらなくなってしまった。もっと直接的な原因としては相互の相互くらいの人が私の歌みた動画ツイートを見ていると知ったことだけれど……。

 最近(ここ一か月くらい)で良かったものをここに列記する。日頃からツイートで紹介しているので特段目新しいものはないが、見落としているものなどがあったら聴いてくれると嬉しい。

 シロナさん。歌唱はフラットだが、ざらついた声質、けだるげな発音と発声に凡庸な少女性とでも言えそうな魅力が宿っている。「バニー」の弛緩の仕方にはパンキッシュなものすら感じる。

 存流(ある)さん。発声がふわふわしているが、それはただ歌ったらそうなるというのではなく精確なボーカルコントロールがなせる業で、芯の歌唱にはパワーと軽やかさが両立している。この曲が一番良い。

 闇様ことラプラス・ダークネスさん。ウッドベースや808など一つ一つの音色が立ったバックトラックの中でロリ声的な歌い方が強烈な存在感を主張し、トータルでのサウンドをユニークなものにしている。さらに言えば原曲にないリバーブやディレイをボーカルにかけたり、いい意味でバックトラックとボーカルを不調和なままに馴染ませたミックスの仕事が本当に素晴らしい。この動画がやっていることは"カバー"ではなく"ダブワイズ"で、楽曲の可能性を拡張しているように感じた。

 歌い出しの「だぁらんと垂れ下がっちゃった栄光の手を御覧」を聴いただけでその異様さが分かる白籤ねんねさんの凄まじいカバー。音数が多く音程の上下が激しい楽曲においてズルズルと引きずるようにリズムを後ろにもたれさせることで、呪術的な迫力が生まれている。これは去年のカバーだが、これ以上のカバーが今年いくつ出るだろうか。

 シスター・クレアの少女レイ。あまり面白い歌を歌うイメージがなかったのだが、いつの間にかこの優しい声質のまま歌唱にメリハリが生まれていて引き込まれてしまった。歌い出しの「本能が狂い始める」からのコーラスが重なった箇所は捉えどころのない陽炎のような響きがあるし、同じようにコーラスを重ねていてもサビの歌唱には少女の実像としての艶と力強さがある。

 桃鈴ねねさんの歌唱が凄すぎる。スムースに流れつつキックとスネアで躍動する四つ打ちのグルーヴを身体で把握していなければこういう歌唱にはならない。常闇トワさんの歌唱もサウンドのクールな側面を引き出すことに成功していてかっこいいが、そこに入ってくる桃鈴ねねさんの「Oh!」や「Yeah!」があまりにもグルーヴィーでそれどころではなくなってしまう。

 吐息が多い歌唱を得意とする歌い手は数多くいるが、ここまで音程が埋もれている人は初めて見た。かといってふわふわしているのではなく、むしろグルーヴの把握はかなり鋭い方なのが面白い。額縁の中で踊っているが、膝と腰を動作の始点として踊るのはファンクのグルーヴを理解していなければできないことで、音楽的な良さが動画によって裏付けられるというのが面白いなと思った。

 Finana RyuguさんのCH4NGE。自分が知っている中で最も四つ打ち・トラップにおけるフロウが巧みで、最も楽曲に新しい魅力を付与しているカバー。英語ネイティブ故の"Sit down, sit down"の発音の良さが評価に寄与しているのも否めないが、"ああもうフリーズキメてや"からのラップの圧倒的なグルーヴ感はそれでは説明がつかない。無理に低音のえぐい声を出そうとせず、高く甘い声のまま自然に歌っていて、"Sit down, sit down"のクールさが際立つのも好ポイント。この人は"TSUNAMI"でも明らかに歌唱への適性を見せていたし、これからもたくさん歌ってほしい。

追記:音楽関連のツイートは相互のTLに表示されているとしても読まれているとまでは思っていないので、たまに通知がつくと「私が見えているのか……?」と驚く。

聴いたもの

 今日は上にたくさん書いたのでこの欄はなし。