雑記

__blurry_のおぼえがき

9/17

できたこと

  • 洗濯
  • 皿洗い
  • 炊飯器のセット

雑感

今日

 朝起きて全ての洗い物を片付けて洗濯をした。人間性が回復していくのを感じた。
 昨日は友達に誘われてコンカフェに行った。18歳19歳の人間(一部は高校生)が終電も過ぎた時間に成人に酒を提供しながら会話する仕事に従事しているというのはものすごいことだと思ったが、考えてみれば18歳は成人である。成人がすることに年長が文句をつけるのはパターナリズムであって、口出しする筋合いもないのだが……。どうにも割り切れないものが残った。

My Own Dig

 午前は家事とBandcampのカートの清算に新譜チェックで終わった。今日チェックしたのはたぶん200枚くらい。平日の時間はほとんど歌ってみたのディグに費やしているので、Bandcampの新譜チェックは必然的に土日に追いやられる。
 正直なところBandcampのディグは他人がやっているので、それを頼りに出来るし良いかと思っている節はある。一方で歌ってみたディグはほとんど誰もやっていないので、私が取りこぼしたらもう回収するのは不可能である。そうすると取りこぼす可能性が高いのは後者であって、そちら側にリソースを振り向けることになる。
 「エクスペリメンタルは最も情報が整理されていてディグをやりやすいジャンルだ」という主旨のツイートを見た覚えがあるが、全くその通りだと思う。探す方法もとにかく手あたり次第に曲をYouTubeの検索窓に打ち込むしかないし、誰かがやっているとしてもその結果はどこにも整理されていない。とにかく全部自力である。
 正直今までのBandcampの使い方は、基本的にBandcampの記事か誰かのツイート、レコード屋のリリース情報などを頼りに作品を見つけるか、フォローしているレーベルからのメールをチェックするかで、とにかく受動的だったという自覚がある。私は今生まれて初めて能動的なディグをし、自分だけが知っているものを愛でている。とても生きているという感じがする。

生身へのリスペクト

 記事のリンクは載せないが、知名度のある音楽リスナーがkurayamisaka - kimi wo omotte iruを「大の男がこんな物語を考えているのはキモすぎる」と評していたのを数か月前に目にした。そのことに対する激しい怒りが月に1回くらいフラッシュバックしてくる。マチズモと女性性の崇拝のキメラで、今一番見苦しい"オタク"の物言いだし、百合というジャンルとその発展を支えてきた作家に対しても極めて失礼だと思う。
 別にこの人に限ったことではないが、音楽リスナーならびに制作者の中でも、女性性をやたらと崇拝しているような人が散見されるのがこのところしんどい。結局のところ人間を性別でしか見ておらず、一人の人間としてリスペクトできていないということだし、一人ひとりの異なる個体が異なるものを作り出しているアートというものに長く触れていながら、そういう考え方になってしまうのはとても残念だなと感じた。

聴いたもの

 ここしばらくで良かったものをダイジェストで。

haya na - ドーナツホール(cover)

 今一番勢いのある歌い手はやなさんのドーナツホール。この人は歌もミックスもMV制作も全て自分でやるし、界隈の歌い手のMV制作にも関わっていたりする。
 本家GUMIや米津玄師のセルフカバーとは違う、か細く切実な歌声がドーナツホールの切なさを一番引き出している。歌ってみたが面白いのは楽曲リリース時点では想定されていない別解を導き出してくるところで、これはその最たる例だと思った。

 以下はやなさんの良かった動画をいくつか。登録2桁の時期から見ていたはずなので今もう400人もいるのは感慨深い。

 これがオリジナルMVなのが信じられない。一つ一つの発想がぶっ飛んでいつつもちゃんとかわいい。

Parfaitty - LADY(LILPA Arrange)(cover)

 文脈を整理すると、Lilpaという韓国のVtuberがおり、その人が出した米津玄師 - LADYの韓国語版カバーが物凄く伸びた(今日の時点で532万再生)。同じく韓国語ネイティブらしいVtuberのParfaittyがその人の訳詞を使ってカバーしたのがこの動画である。
 インスト自体は在野のカラオケ音源なのだが、この人のいかにもアニメ声的で愛らしい歌声が、米津玄師の洒脱なサウンドの上に乗ることで、限りなくフィクション的(キャラソン的)でありつつもささやかな幸福と日常を感じさせて強く胸に迫ってくる。Twitterで萌え声どうこうという話をしていたのだが、結局のところ私が求めているものの一つはこういったようなもので、強く虚構性を感じさせるが故に、最もエモーショナルであり得るという転倒なのかもしれないと思った。

Nyk4 - ロストアンブレラ(yuigot Remix)

 読み方は「にゃか」。隅々まで力の漲った歌唱がダブステップのビートを融通無碍に乗りこなしている。最近出てきた人の中で一番期待できる歌い手。

yowa - Ditto(cover)

 『生活は簡単じゃないね』などのエモーショナルな楽曲を得意とする歌い手yowaのNewJeansカバー。NewJeansのバージョンはそのレベルの高いプロダクションやエレクトロニックな質感に加工されたボーカルもあってY2K時代の10代的なノスタルジーとエモーションを外側から描き出すサウンドである。一方でこのバージョンはさほど高価でもないマイクでの弾き語りということもあって、意中の相手の煮え切らない態度に焦れた少女の感情が一人称視点から語られているのを強く感じる。自分の生きている時間を「アオハル」と相対化して語ってなどいられなければ、何らかの表象をレプリゼントする余裕もないエモーショナルさはNewJeansよりも強く十代的で、コンセプトとサウンドのフィット感がとても心地いいカバー。

美雲このは - リレイアウター(cover)

 美雲このははレンタルサーバーサービスを展開するConoHaのオリジナルキャラクターで、上坂すみれさんがCVを担当している。早い話が上坂すみれさんのボカロカバー。
 歌い出しを聴いた瞬間月ノ美兎委員長かと思ったのだが、一音一音の処理とグルーヴのレベル、声色のトーンを維持しつつも繰り出される多彩な歌唱表現のレベルが在野のインターネットシンガーのレベルを遥かに超えている。本職の声優の凄みを思い知った。

 以下Bandcampで買ったものを。

Jeff Rosenstock - HELLMODE

 USのDIYパンクシーンの重鎮の最新作らしい。全く知らないのでレコードショップのライナーをパクった。
 おそらくヤバいTシャツ屋さんなどのサウンドのルーツとなったであろう、底抜けにポジティブで楽しいパンクアルバム。シンガロングも山盛りのコーラスも何の躊躇いもなくドカドカ積んでくるところにHyperpop以降の感覚を感じた。正確にはこの人はおそらく変わっていなくて、私がHyperpop以降の慎みのない感覚に適応していったのだろうけれど……。

Yussef Dayes - Black Classical Music

 UKジャズシーンの筆頭ドラマーYussef Dayesの最新アルバム。"UKジャズ"という言葉が浸透し始める前、Chris Dave以降くらいの時代から新時代のジャズを切り拓いていたオリジネーターらしく、USデトロイトスピリチュアルジャズやラテンジャズ、Jaco Pastoriusフュージョンなど、USから始まって多様に分岐したジャズの歴史を辿り直し、"Black Classical Music"という一つの言葉の元に再統合しようという壮大な試みが感じられる。現在のUKシーンのメルクマールは"London Brew"だろうけれど、現代ジャズシーンとしての到達点にはこちらのアルバムが適任だろう。今年を代表する傑作の一枚。

Titi Bakorta - Molende

 Nyege Nyege Tapesからのリリース。コンゴのポップスやフォークを消化したサウンドとのことだが、正直これがどういうロジックで成立している音楽なのか全然分からない。音色一つ一つの選択や配置にはまったく迷いが感じられないし、統一感も感じられるのだが、どういう快楽原則に則っていてどこに球を投げ込んでいるのか皆目見当もつかない。西洋の音楽シーンに慣れた耳では解釈の難しい、極めてローカルな音だなと思った。個人的に今年の印象深い作品の一枚。

D/P/I - Maldita Vida

 メキシコのサウンドシステムやミックステープのカルチャーにインスパイアされたという作品。インダストリアルを基調にラテンアメリカレゲトンやDeconstructed Club、ドラムンベースなどが融合したような、異様な音像でありながら極めてストリート的な快楽原則を持つはちゃめちゃにかっこいいアルバム。CDを買った。

読んだもの

いしいひさいち - ROCA: 吉川ロカ ストーリーライブ

https://amzn.asia/d/bllCPLL

 話題になっていた作品をようやく購入。とんでもない傑作だった……。
 物語の中心となるのは「ファド」というポルトガルの国民的歌謡で、単語としては「宿命」を意味する。読者のほとんどが知らないであろうこのジャンルが持つ複雑な感情の綾を、150ページかけて思い知らされてしまった。正直読んでいても全然聞こえなければ感じられもしなかったファドの音と情緒が今では完全に分かるし、これを書いている今でもその情緒の重みによる虚脱感が抜けていない。凄まじく切れ味の鋭い百合だった。