雑記

__blurry_のおぼえがき

11/29


できたこと

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雑感

ちょい華金

 金曜の夜なので外に出てビールを一杯飲んだ。一人で飲むなら中ジョッキ1杯もあれば充分。

卒業発表

 日がな降っていた雪まみれになりながら帰宅し、ふとホロライブの沙花叉クロヱさんの重大発表があったのを思い出して配信をつけたら卒業発表で仰天した。理由は会社の方向性と自分のやりたいことが合わなくなってきたことに加えて、稼働の増えすぎで身体を壊したため。今後のことは未定とはいえ、自分の人生を考えての卒業という。
 この頃は配信は見ていなかったとはいえ、歌ってみた動画やオリジナル曲は欠かさずチェックしていた人だった。この歌声が当分聴けなくなることが本当に残念。
 公式からの発表によると卒業ではなく「配信活動終了」で、将来のイベントでスポットで顔出しできる機会を残しておくということらしい。アメリア・ワトソンさんに続いて二人目の例となるが、特にタレントに拘束を課すものではなく、ホロライブ側の希望として提案されたものであり、そうであるからには円満な話し合いができたのだろう。逆にこういった選択肢が提示された中で「卒業」する配信者が出てきた時には様々な憶測が生まれるようにも思う。

こうした検討の中で、新しい「卒業」の一つの形として辿り着いたのが「配信活動終了」です。
「配信活動終了」は原則として「卒業」の一つの形であることには変わりません。
タレントによるYoutubeSNSなどの配信活動やイベントへの参加などは終了します。

その上で、将来のプロジェクトにおけるプロダクションの思いと、タレントの意思の合意によって、偶然タイミングの合った卒業生が母校に顔を出すかのように、今後も限定的な形での活動をお届けする機会を願う取り組みとなります。

https://note.cover-corp.com/n/ne3a8b7a553c0

 その後に続く歌枠も聴いていたのだが、Prisoner of Love→だから僕は音楽をやめたという冒頭二曲に感情をやられてしまった。
 配信中でオリジナル曲のMVが告知された。いなくなると分かったからなのか普段響かない曲調なのに妙に良く聞こえる。三周年記念グッズも欲しい。

SNS中毒

 Twitterに時間を注ぎ込みすぎている自覚があったのでスマホアプリに時間制限を設けた。とりあえず二時間で設定して、減らせそうだったら一時間半、一時間……と徐々に抜けていければよかったのだが、このところ毎日のように二時間を使い切ってしまっている。それどころか日が変わって使用時間がリセットされた途端にまた触り始める始末。どうかしている。

サンタシーズン

 クリスマスが近いので親向けのクリスマスプレゼントを見繕っている。父親にはiPadを贈るとして母親には何にしようか……。手袋かキャンドル、もしくはキャンドルホルダーでも贈りたいところ。キャンドルホルダーと燭台が同じものなのかそうでないのかも分かっていないレベルなので、まずはリサーチから始めなければならない。
 この前家族仲の話になった時に私が頻繁に家族と会ったり贈り物をしていることについて驚かれてしまった。親がいつか死ぬということを考えていたら親孝行をしないではいられないのだが、そういう感覚は他の人にはないらしい。友達も少なければ交際相手も結婚の予定も何もなく、その上地元に残ることを自分で選んだ人間だから当然そうなるという話もある。

これが30年前の曲だなんて

 大沖活動が年一で再掲しては物議を醸す漫画がまた流れてきた。私は今まで年下の側に共感していたのだが、最近はちょっと考え方が変わってきている。なぜかというとシティポップリバイバルがあったから。
 シティポップやY2Kなどリバイバルムーブメントが発生するのは別にいいし、(Y2Kは苦手であるものの)シティポップから始まるジャパニーズニューエイジフュージョンの再発の流れについては私も楽しく聴いた。しかしこういった音楽が"最新のモード"としてもてはやされているのを見ると、流行の中心にいる二十代前半こそが「逆に新しい」というレトリックで実質的に「古さを感じない」と同じことを言っていそうな印象が生じてしまう。
 リバイバルムーブメントが明確にリバイバルつまり"過去の参照"として意識されているさなかでは、前述の漫画のような「古さ」だけに着目するやり取りはもはや生じ得ないように思うし、20年前の曲と今の曲の区別がぱっとつけられないということも起こりそう(年上側の「古さを感じない」発言は今も昔も明確にダメ)。何なら年上の側が年下の感性の"古さ"に気がつくことも増えつつあるだろうとすら思う。
 VTuberの歌ってみた動画や歌枠で、昔の名曲が全然好意的に受け入れられているのも付け加えてもいい。キリンジ『エイリアンズ』の発表は2000年で、『若者のすべて』も2008年。これらの発表は『ワールドイズマイン』『チルノのパーフェクトさんすう教室』といった"インターネット老人会"と評される楽曲以前である。月ノ美兎さん・周央サンゴさんが取り上げた青葉市子『いきのこり●ぼくら』でも2013年と10年以上前。リリース日だけ見れば古いも古いと言わざるをえないが、そこについていちいち指摘する人は観たことがない。これは実質的に古い楽曲であっても、"古い"という記号で認識されていないからだと思っている。
 "若者"が肌感で絶対的な"新しさ"を理解しているということ自体が幻想なのだろうけれど、なんかインターネットの威勢のいい人達がとかく上の世代を"老害"などと呼びつけては自分たちの感性のフレッシュさを称揚していたのを思い出し、何だったんだろうと思いながらだらだらと書いてしまった。

 個人的には古いものの中から現代的目線での面白さを取り出す営み自体は全然楽しいのだが、それはそれとして自分が「古さ」に手を染めていることを忘れたことはないし、その「古さ」を引き受けないことの方がよっぽど見苦しいのだとは肝に銘じておきたい。

 今年高く評価されていたGeordie Greepの作品なんか普通に古いというか、アーカイブを参照することに何の躊躇いもないところがある。このサウンドを「新しい」とか言い張っても仕方がない。つまりはそういうことを言いたい。

聴いたもの

mus.hiba - White Girl

 その筋では有名らしいボカロP、mus.hibaの作品(ただし使っているのはクリプトンの"ボーカロイド™"ではなくUTAU)。2014年に東京のレーベルnobleからリリースされ、のちにOrange Milkからカセットで再発された。
 00~10年代エレクトロニカ、トラップ、LAベース、グリッチといった多彩な要素が取り入れられ、各曲ごとに違う表情が見えてくる。ボーカロイド/soundcloudシーンのカジュアルさからなのか必ずしも"硬派"な音楽性にこだわらず、スーパーソーによる強烈な高揚感まで煽る展開もあって、チルからアッパーまでを包括する自在な音楽性がとても新鮮な作品だった。とは言っても風呂敷をやたらに広げるような感覚はなく、どの曲にも中心には柔らかくユーフォリックな情感と、雪歌ユフによる冷たく囁くような合成音声の歌声が据えられて、アルバムとしての統一感が保たれている。10年代のポップ~アンダーグラウンド電子音楽を違う角度から総括しつつ、ユーザーの少ないボーカロイドによる作家的な記名性が両立した作品でとても気に入った。

Astor Piazzolla & Su Quinteto - Concierto En El Philharmonic Hall De Nueva York

 邦題『ニューヨークのアストル・ピアソラ』。black midiのサードを聴き直していて「これはタンゴだ」と思い、もっとタンゴが聴きたいと思って勢いで買った。ピアソラが生涯をかけて探求したキンテート(五重奏団)構成によるニューヨークの録音で、多作で知られる(知らなかった)ピアソラの全ディスコグラフィーの中でも屈指の傑作らしい。
 タンゴにもピアソラにも明るくなく、ベスト盤を一枚聴いただけの自分にはこれがどの程度のグレードの作品なのか判定することはできないが、バンドネオンの決然としたメロディ、ストリングスの不協和音をためらわないポルタメントの緊張感、ピアノの優美なタッチといった楽曲を構成する要素の一つ一つの冴えは明らかに感じられる。背筋の伸びるようなエレガンスとアルゼンチンの都市の憂愁、そして何よりも濃厚なロマンティシズムが共存するサウンドは、未だ過去とならない新鮮な響きがある。  なお作品には関係のない話だが、ニューヨークがスペイン語で"Nueva York"になるのはかっこよすぎる。

読んだもの

今日は特になし。

11/21

できたこと

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  • 炊飯

雑感

今日

 昨日書いた日記を出し忘れていた。書き直すほどのものでもないのでそのまま出す。時制がところどころおかしいかもしれない。

歌みた・ディグ

 今日は一日中『ずうっといっしょ!』の歌ってみたを聴き続けていた。同じ曲であっても、歌い手ごとに声質やその使い方、トラックに対するリズムの取り方は異なっているし、インストの方もキーの上下やミックスの質感によるサウンドの情感は様々に変化する。さらには二つが重なった時の化学反応もここに加わるのであるから、聴いた感触は一個一個まるで別物となる。今日だけで100個くらいはチェックしたはずだが全然飽きる時間がなかった。また他の曲でもやりたい。

取捨選択

 日記を書いても、結局のところその日のことを丸ごと書き残せるわけではないと改めて思う。書き残しておきたいこと、書くまでもないと思ったことだけではなく、書き残さないままに日記を結ぶことで、一切なかったことにしたいこともある。もしかしたらそういったことを書き残すのが本来の日記なのかもしれないが……。

フリマハンター、メル狩人(かりうど)

 古い作品に関心が向くことが増えたのだが、こんなものをいちいち新譜で買ってたらあっという間に破産してしまうことが分かった。それにそもそも新品で買えないことも多いし……という話を父親にしたところメルカリを勧められ、その日のうちに始めた。
 これは本当にすごい。欲しい作品の物理が500円程度で買えてしまう。こんなことがあっていいんだろうか。マスコアやブラックメタルの名盤も、あの定番も、あの欲しかった作品もあの勧められたアルバムも全部ワンコインで手に入る。ストリーミングサービスで音楽を聴くことに全然慣れていない身としてはこれは革命だった。……のだが、ディグが高じて結局先月の出費はすごいことになった。ご利用は計画的に。今月からはもう少し節制する。

 タイトルにしようと思ったら既出だった。

愛と恋、永遠と刹那

 永遠の愛、お互いが一つの約束にコミットし関係を持続させることの美しさ、みたいな気分が段々と相対化されてきて、今は実存ごと丸焦げになるような激しく燃え上がる恋とその墜落を見たい気分になっている。
 恋は墜落するに決まっている。ただアクセルを踏み込んでいるだけであるから当然のこととして。そこに何の持続可能性もないし、安易なエモと言えばそうかもしれないが、それも突き詰めれば激情ハードコアパンクになる。今はパンクの気分。stableな律動の中で一つの永遠に導かれるハウスミュージックはまた今度でいい。
 年を重ねれば愛の方に寄っていって恋には戻らないものと思っていたが、結局のところ愛も恋もこの人生の中では縁遠いものであって、実感に結びつかないままなのであれば、食事のマイブームのように、ラーメンの味の好みが変わるようにして双方を行ったり来たりするしかないのかもしれない。何の根拠もなく信じられるものは慰撫的なASMRと家族しかない。友人関係やインターネットの相互はどうだろうか……なつかしい言葉だが「場の根にアクセスできない」という感覚がずっとあって、ちょっとしたきっかけで弾き出されそうな恐れはずっとある。

聴いたもの

Albert Karch & Gareth Quinn Redmond - Warszawa

 WRWTFWW Records新譜はかなりいいアンビエント作品。ピアノやシンセの美しいフレージングもさることながら、完璧にコントロールされた音響と繊細なプレイによって、空間をほのかに揺らす幽玄なドラムに強く惹かれる。ドラムを使ったアンビエント作品では今年で一番いい。

11/19

できたこと

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  • 運動

雑感

積み書(が)き

 日記に書きたいことが溜まっていくのに忙しさにかまけてTwitterに書き散らす日々が続き、気がつけば何一つとして更新できないまま二月半も経ってしまった。書きたかったのは以下。

  • 沖縄旅行に行ったこととそのスケジュール
  • イハナシの魔女をプレイしたこと

 イハナシの魔女の感想は残っていた。以下に供養する。

イハナシの魔女

 ネタバレを含む。
 沖縄旅行から帰ってきた後、何気なく読んでいたゲームレビューで「琉球」という単語が目に留まり、人に強く推されたのもあってプレイしてみたのだが、とにかく面白かった。文章は読みやすく、スムーズな進行の中にところどころ仕掛けてある伏線は後からきっちり回収され、キャラクターは一人ひとりが魅力的。プレイが終わってからもしばらくは作品世界から離れられなかった。
 何と言ってもヒロインがかわいい。リルゥが光に向ける初々しい好意と真っ直ぐな愛は終始こちらを魅了して離さないし、赤摘明はメタ発言を繰り返してプレイヤーと主人公を終始おちょくりつつも、芯には熱く眩しいものがあって、落差で感情を大きく揺さぶってくる。
 好きだったのはアカリ編とリルゥ編。初恋と失恋の一番おいしいところがぎゅっと詰まったストーリーだった。
 この作者最高だな……と思ったのは、リルゥが日の光を浴びられなくなったところ。病弱美少女と言えばアルビノアルビノと言えば光線過敏症!闇の中でしか暮らせない美少女との社会から隔絶された生活!エモ浸しのシチュエーションを、異空の褐色の魔女というこれまたド直球の属性にねじ込む作者の迷いのなさに強く心を打たれた。中学生の頃に入り浸っていた創作掲示板でのオリキャラ群を思い出す。大人のためのデラックス・お子様ランチ。YOASOBI。ポップパンク・リバイバル。ハイブロウな創作物からは得られない、抗しがたいエモ。そういうもの。
 この物語はハッピーエンドで終わるのだが、そこに至るまでの過程でリルゥがあまりに不憫な目に遭っていて、プレイ中は「こんなのを見せられたらハッピーエンドになった上で溺れるくらい幸せになってもらわないと困る……」と思っていた。ところがアフターストーリーを見てみたらずいぶんとあっさりと終わってしまい、今はこの復讐心にも似た感情の向け先を失って本編後のリルゥの生活を考えることで頭がいっぱいになっている。二次創作の初期衝動ってこういうものだったなと久しぶりに思い出した。
 記憶を飛ばしてもう一周やりたい。別に記憶を飛ばさなくてももう一周やりたいかもしれない。好きになったキャラクターに会えるならなんでもいい。

北の冬

 昨夜は雪が降っていたのだが、これまでとは違って昼になっても溶けずに残り、夜には路面の一部が凍り付き始めていた。ついに冬がやってきたということらしい。積雪に備えて役所に行く用事は全て済ませたし、米も当分困らない量は買い足してある。とりあえず冬の支度は大丈夫そう。
 雪の夜は空が褐色に明るみ、私のTwitterアイコンの背景のような色合いになる。寝る前にカーテンの隙間からぼんやりと眺めるこの景色が好きだったりする。

聴いたもの

Lechuga Zafiro - Desde los oídos de un sapo

 TraTraTraxからの新譜。ウルグアイのプロデューサーらしい。
 水の音や動物の鳴き声といったフィールドレコーディングの音色を取り入れ、Deconstructed Clubの音響的実験の成果をクラブミュージックへとフィードバックしたビートは、一般的な"ラテン"らしさから大きく離れた尖ったサウンドデザインでありながらも、アフロパーカッションや木琴を思わせる土着的な響きとリズムを持っている。レゲトンや情熱的なコード感といったクリシェオリエンタリズムを回避しつつ、新鮮な角度からラテンアメリカ特有の感覚を巧みに描き出したこの作品は、今年リリースされたラテンアメリカ関連の電子音楽の中でも特にユニークで、Chuquimamani-Condori『DJ E』などと並んでレゲトン以降のラテン音楽シーンの可能性を示唆しているように感じられた。

読んだもの

『STATUS AND CULTURE』を読み進めている。ずっと面白い。

9/7


できたこと

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  • 服をクリーニングに出す

雑感

脱稿

 ここ一か月取り組んでいた原稿の校正作業までが完了した。ほんとうに疲れた……。こんなことを書いていいのか、こんなレベルの書き物でいいのか、そんなことばかり悩みつつ、それでも依頼された限りはやれるだけのことはやる、そんなことを悩みながら延々と作品に取り組んだ一か月だった。
 今回の執筆作業の終盤はほとんどChatGPTに頼りきりだった。自分は文章を書くことが本当に苦手なので、書いたものを一瞬で読みやすく直してくれるChatGPTがなければとてもではないが読める文章にはならなかっただろう。数日間で三千円が飛んだが、その甲斐はあったと思う。
 これで晴れて「音楽ライター」という肩書きを名乗れるらしい。そのためにもここから敢行まではおとなしく暮らす。
 出るのは以下。買ってねと言いたい気持ちと、恥ずかしいから読まないでねという気持ちが半々くらい。尊敬する書き手の方々がたくさん寄稿しているのでそっちは読んでほしい。

www.seidosha.co.jp

【資料】栞にフィットする角

今日

 9時前に起きてぼんやりとTLを眺めつつBandcamp Fridayの落穂拾いをした後、街に出て父親と食事をした。近況報告とか最近聴いた音楽とか。私がちょこちょこ貸している作品を気に入ってくれているみたいで嬉しい。ちあきなおみ、浅川マキ、山崎ハコあたりが共通の話題に上がった。ストーンズにハマっているようだったので手持ちの作品を今度貸すという話をして別れた。
 お腹も良い感じに膨れて、その後の予定まで時間があったのでふらっと献血に立ち寄ったが、問診の結果献血不可の薬を飲んでいることが判明して断られてしまった。この薬を飲んでいる限り献血には行けないらしい。社会貢献の奮起がくじかれて10分くらい引きずった。その後スタバでも行くかと思ったがどこも席が空いていないので、八つ当たり気味にサーティワンを食べたりした。レモンシャーベット・ポッピングシャワー・サンセットサーフィンのトリプルポップ。いつも思うがサーティワンはちょっと溶けかけで出してくるので食べていてちょっと物足りない。
 その後友達と『きみの色』を見た。山田尚子脚本?ということと何らかの曲が流れるということだけしか知らない状態で友達を誘って行ったのだが、完全に大正解だった。全然泣いた。詳しい感想は後述するが、観終えた後に友達と全く感想を共有しなかった。今これを言葉にして要素を分節したら全てが台無しになると思った。実際そういう映画だと感じる。

 さすがに買った。買わなければ嘘だろう。

 その後映画館の下階で売っていたぶいすぽ焼き(ぶいすぽっ!メンバーの顔の形をしたたい焼き。コースターが付いてくる)を買った。如月れんさんのことが見てるだけで情緒がおかしくなるくらい好きなのでちょっぴり期待したが、出てきたのは花芽なずなさん。人マニアの歌みたが良かった人と記憶していたが、調べたところそれは花芽すみれさんという別人だった。花芽という名字が被ることがあるのだな。クリームが想定される量の半分しか入っていなかった。味がしない。
 オータムフェストを見て回る。映画館でポップコーンを食べたし、ドリンクバーの飲み物も二杯飲んだので正直お腹も空いていなかったのだが、来たからには一個くらい食べよう……と思ったらラストオーダーまで10分しかないことがその場で判明した。時間があまりになかったので、ぱっと目についたものに並んだら目の前の人で完売。完全にどうでもよくなって結局何も食べなかった。

 友達ももう少し食べたさそうだったのでラーメンを食べた。店が遠かったので歩いているうちに余裕が出てきた。醤油ラーメンが有名な店だが味噌の気分だったので味噌を食べた。店の評判より自分の気持ち。久々においしいラーメンを食べて幸せな気分になった。

 帰って今日買ったCDと父親から回収したスピッツのシングル集を取り込み、洗濯機を回し、ついでに思い立って日記なんかを書いている。誰のためでもない文章を書くのは久しぶりだが、久しぶりに心が凪いでいる。できることなら毎日の終わりに書きたい。

『きみの色』

 以下ネタバレ注意。



















 本当に美しい映画だった。信仰を生きるということ、自分の道を選んで生きるということ、役目を果たすために生きるということ。そういった個々の生一つ一つをリスペクトしながら、音楽はそうした別個の生き方を選ぶ人々を繋ぎ、一つにする力があるという祈りに全ベットした、祈りと愛に満ちた映画だと感じた。
 ぱっと見で目についたのは画面における執拗な十字と斜線のモチーフの反復。十字のモチーフが主に窓枠で多用されていたことを考えれば、十字の体現する規律と正義に対して斜線はその傾きというか、その美徳に沿って生きられない弱さや人情を表すのが斜めということになりそうな感じがする。そしてシスター日吉子が作永きみを学園祭に誘い、イザヤ書を引用しながら勇気づけるシーン以降は窓枠の十字に斜めのクロスが追加されたものが画面に映るようになるし、映画のラストシーンではトツ子がバレエを踊ることで十字そのものになる。弱さを受け入れながら信仰を生きるということ、言い換えれば祈りを持ち続ける生き方が可能であることをモチーフで簡単に示しているわけで、モチーフのアレンジの仕方がとても好みだなと感じた。
 ライブシーンは本当に最高だった。トツ子は結局全然鍵盤は弾けなくて両手の人差し指二本でベースラインを弾いたりただ踊っていたりとほぼ賑やかしのようなものだったが、それでもトツ子がいなければあの音楽もバンドも成立しない。そしてそうした下手さを映画はポストパンク/テクノ的な在り方として肯定する(しろねこ堂でUKロックを売っていたり、影平ルイが"ユニオン"に寄ってジャンクの機材を買い、明らかにR&S Recordsのものと分かるレコードを買っているのはそういうことだろう)。観客のクラTがスマイルマークなのはやりすぎているくらいだが、制作がお茶目に舌を出しているのが見えて嫌いではない。あの観客に合わせて私も立ち上がって踊ろうかと思った(そこまではしなかったが客席でちょっと揺れていた)。
 トツ子が学園の中庭で踊るシーンは一番泣いた。前述の通りだが十字のモチーフを散々反復した後に、冒頭の不器用なバレエというモチーフをふと持ってきて重ねるという伏線の回収の仕方が好みだったのでもあるし、シンプルに美しかったということでもある。他にもあるかもしれないが思い出せない。
 作永きみがルイとの別れで「頑張れ」と目一杯叫ぶシーンもすさまじかった。聖歌隊の今後を担う逸材として期待されていたほどの美しい歌声の作永きみが虚飾も何もかなぐり捨てて懸命に呼びかけるシーンは、大きな声を出すという最も原始的な形でのロックであり、最も原始的な祈りであり、信仰とロックを両立するとはどのようなことなのかを完璧に体現していたと思う。張り詰めた静寂の中で喉が破れそうなほどの叫びが劇場に響き渡るこのシーンは、牛尾憲輔の手になる音響の一つのピークでもあった。
 EDのミスチルについては正直蛇足だと思う。ポストパンクの映画だったはずなのにここだけがポップスになっている。
 映画を見終えてからタイトルが"your colour"と「(作永)きみの色」のダブルミーニングであることに気がつき、帰宅してサントラを開けたところで英題が"all is colour within"であることを知った。

2023年ベストアルバム

まえがき

 2023年ベストアルバムの記事を書こうと思ったのだが、体調の悪化や仕事、増え続けるリリースチェック量などに追われてとても書き切れる気がしなかったので、諦めて途中で出すことにした。
 去年書いたものをそのまま出しているのでその辺りは留意してほしい。全90作。

これは何

 2023年のベストアルバムをまとめた。
 基本ルールは以下とする。

  • 2023年1月~12月リリース(リイシュー等も含め、2022年に出たと自分が認識している作品)
  • 聴いた回数では判断しない
  • だいたい順不同(買った順)
  • EPとアルバムを区別しない
  • 買ったものに限る(そもそも買っていないものはほとんど覚えていないけれど……)

2023年ベストアルバム

1. Kali Malone (featuring Stephen O’Malley & Lucy Railton) - Does Spring Hide Its Joy

 現代アンビエントシーンにおいてはあまりにハードコアすぎると思われるほどにストイックな3時間のドローン。チェロ・エレキギターのそれぞれに豊かな響きとサイン波の淡々とした響きが音量の配分を変えながら混じり合い、空間にゆらぎと緊張感を絶え間なく生み出している。今年のドローンはこれ一枚でよさそう。

2. Cocktail Party Effect - Fixing the Roof EP

 上半期いちバキバキのテクノ。Deconstructed Clubを通過した非四つ打ちの攻撃的なリズムやノイジーサウンドと、テクノの文法によるスムースに流れる要素の塩梅が絶妙。

3. Groupshow - Greatest Hits

 Jan JelinekとAndrew Peklerが参加した電子クラウトロックプロジェクトのファースト。フリージャズを経由したような軽やかなドラムがクラウトロックらしいグルーヴを生み出しつつも、電子音によるインプロビゼーションはしっかりと新鮮な音響を鳴らしていて聴き応えがある。

4. Nick León & Dj Python - esplit ep

 レゲトン勢の著名アーティスト二名による新譜。DJ Pythonによる重力が強まったようなディープエレクトロの3曲目と、無色透明のアンビエント空間にアフロパーカッションが泡立つような4曲目が先鋭的で素晴らしいクオリティ。

5. Santa Muerte - Eslabón EP

 Hyperdubから出たやつ。これがデビューEPとのことだが、ダブステップを基調にしつつもトライバルでパワフルなリズムトラックの音使いはN.A.A.F.I勢やレゲトンの影響を感じるし、エモーショナルなシンセのコードや飽和感はBorder Communityシューゲイザーに繋がっていくものを感じさせる。多様でカラフルなバックグラウンドが見事に作家性に結実した良い作品。

6. TMSV - Unforeseen Consequences

 ダブステップ・ジャングル系の作家TMSVが自分のレーベルPerfect RecordsからリリースしたEP。パワフルで重厚なダブステップだが、ヘヴィさはそのままに140BPMの軽やかなビート感を両立しているところにジャングルの作家らしい巧みさを感じる。
 TMSVはDeep Medi Musikから出したEPがとても良いのでこちらもおすすめしたい。

7. Tony Conrad / Arnold Dreyblatt / Jim O'Rourke - Tonic 19-01-2001

 ドローンのライブ音源。Tony Conradの豊かかつ強烈にサイケデリックなドローンに打ちのめされる40分間。たぶん今年これ以上にビビッドな音は出てこない。

8. Two Shell - lil spirits

 Hyperpop系テクノの始祖Two Shellの2023年作。フロアでプレイされる音楽としての神秘性を保ちつつ、キャッチーでコード感の強いメロディとボーカルでポップパンク的な直情性を押し出したバランス感覚の強く感じられる作品。

9. Ekorce - Puzzled

 全然詳細を知らない。NYのThe Rust Musicなるレーベルからリリースされた作品で、サイケデリックで柔らかい音使いながらも粘りと弾性の強い高品質なダブステップで、たぶんエレクトロニカ出身なんだろうと想像させるまろやかにトリートメントされた音がユニーク。

10. DJ ojo - Coiled up

 装飾音の多いUK Funky的なビートをDJ Pythonのディープ・レゲトン的な湿度の高いダブアンビエント空間に放った音。

11. Coco Bryce - Point Of No Return

 ジャングル職人Coco Bryceが今年突如リリースしたインストヒップホップアルバム。UKダンスカルチャーの出自を持つせいなのか、上物のフレージングが独特で浮遊感のあるビートに仕上がっている。

12. PAS TASTA - GOOD POP

https://music.apple.com/jp/album/good-pop/1671957304

 2023年上半期のベストポップミュージック。メンバー全員が一般的なポップミュージックから逸脱した音楽性を持ち、楽曲のサウンドもHyperpop以降のどこか異様で振り切れた感触であるにも関わらず、その根底には"ポップ"がある。これはおそらくメンバーの中では一番ポップ寄りのyuigotがある程度音を取りまとめているからと思われるのだが、良識を諦めない人が一人いるおかげで逸脱とポップさのバランスが取れた理想的なポップミュージックに仕上がっていると感じた。
 余談だが、札幌で開催されたAvyssのパーティーに行ったら終盤のクライマックスで"river relief"がかかって大盛り上がりしていた。TEMPLIME"ネオンライト"やtofubeats"RUN REMIX"に続く現代のクラブアンセムはこれということだろう。

13. Kassem Mosse - workshop 32

 ただただ良質なミニマルハウス。音一つ一つはDTMらしいというか、生音と比べると響きの貧しい中途半端な音なのだが、その中途半端な生々しさが逆にドープに響くような絶妙な音の配置がなされている。これはミニマルハウスというジャンルの面白い点だなと思った。

14. Lonnie Holley - Oh Me Oh My

 Jagjaguwarからリリースされた美術家・音楽家Lonnie Holleyの新作。ソウルミュージックスピリチュアルジャズ・フリージャズ・カントリーなどを呑み込んだコズミックで雄大サウンドは20世紀アメリカを生きた人間の歴史がそのまま音に結晶したようで、サウンドの人間的な迫力に圧倒される。個人的に今年を代表する一枚になりそう。

15. Model/Actriz - Dogsbody

 NYのポストパンクバンドのデビューアルバム。No Wave発祥の地ということもあってか、ダンサブルながらも鋭利でひりついたアンサンブルと、ほとんどノイズのようなギターの音色が他のポストパンクバンドとは一線を画す。

16. TRANCE BAND - Entrancing

 SVBKVLTからのリリース。中国のTianzhuo Chenによって創始された流動的なプロジェクトで、Deconstructed Club的なアポカリプティックな電子音と、Swans的なリチュアルなストーナーロックが融合した不穏なサウンドがとてもかっこいい。

17. DJ SMILEY BOBBY - Dhol Tasha Drum Exercises from Maharashtra

 今年も強力なリリースの続くNyege Nyege Tapesの中でも、際立って強烈な一枚。西インドのマハラシュトラ州出身のプロデューサーによる作品で、儀式用のドラムを電子音楽として再解釈したものらしい。伝統音楽の力強さ・宗教性と、キックなり金物なり中東の打楽器なりが高BPMでめちゃくちゃに乱打されることによるレイヴミュージック的な熱狂とが一塊になって押し寄せてくるサウンドとに思考をぶっ飛ばされる。作品構成は26分程度のトラックが2つあって、それぞれの中で曲調とBPMが頻繁に切り替わるため、めちゃくちゃに破壊的なDJミックスとしても聴ける。レーベルが開催するフェスNyege Nyege Festivalの熱狂的な空気が思い浮かぶ最高の作品。
 ちなみに本家のDhol Tasha Drumは以下の動画のような感じ。これを聴くとこのアルバムのサウンドにも納得感がある。

18. Doctor Jeep - Push The Body

 ラテンテクノ・レゲトンの発信地TraTraTraxからのリリース。16分の刻みをキープしたままダブステップからテクノにスイッチする1曲目、不敵なベースラインとスネアの乱打がテンションを徐々に煮立たせていくダンスホールの2曲目、ダークなサイレンのようなシンセ使いが暗いフロアに映えそうなレゲトンの3曲目……と比較的に遅いテンポをフィーチャーした楽曲が並ぶが、4曲目以降のリミックスでは打って変わってアップテンポで激しいサウンドがフロアを破壊しにかかる。特に5曲目のAquarianによる高速サイケバイレファンキと、6曲目のSam Bingaによるパワフルなテクノは白眉。

19. Flora Lux Victoria - Grief Prism

 ノイズサウンドが凄まじく尖った鮮烈なデジタルシューゲイザー。聴いた瞬間に衝撃を受けた。最近新作を出したがそちらもとても良かった。

20. Joe Koshin - HARD11

 リリースにほとんど外れのない、優良UKG~ブレイクスレーベルHARDLINEの11枚目。どの曲もかっこいいが、特にDenham Audioと共作した二曲目は快楽性の塊みたいなビートで頭がおかしくなる。

21. EL irreal Veintiuno - Irrealidades

 2023年上半期でも特に気に入った一枚。儀式めいた南米トライバルサウンドにデンボウとゲットーテクノが融合した、ジャケットのデザインそのままに、誰も見ていない空地で何か非現実的なものが現世に噴出してくるような猛烈なエネルギーを放つ作品。南米シーン全体で見てもきわめてユニークな作品だと思うが、自分以外ほとんど聴いている人を見なかった。

22. 100 gecs - 10,000 gecs

 ハイパーポップデュオ100 gecsの新譜。ハイパーポップがハイパーポップたる所以、すなわち躁的なポップパンク要素をビビッドにこなしつつ、スカやスラッジメタル(?)など、近縁にありながらハイパーポップと結び付けられてこなかった音楽性を包摂しているところにさすがの音楽性の高さを感じた。8曲目のスレンテンについてはふざけているとしか思えないが、高密度でやかましいアルバムの中にこういったユーモアが入ることで、アルバムに100 gecsらしさが加わってアルバムとしてのクオリティは上がっているように感じる。

23. ben bondy - club edits vol 1

 3XL周辺のアンビエント作家ben bondyによるヒップホップのクラブリミックス。ダブアンビエント的なテクスチャはそのままにレゲトンやバイレファンキのビートを取り込んだ、浮遊感がありつつも生々しく身体に響くビートが最高。札幌に来た時にプレイしていたトラックが入っているので、思い入れも込みで選出。この時はまさか今のようなよく分からない方向に行くとは想像できなかった。

24. Kate NV - WOW

25. How To Dress Well - What Remains (Remixes)

 シカゴのアンビエントポップ/R&B作家How To Dress Wellのアルバム"Love Remains"のリミックス盤。Claire Rousey・Nick León・Carmen Villainなど豪華なリミキサーが目を惹き、実際どの楽曲も素晴らしいアンビエントノイズとして再構築されているのだが、特に面白いのは"★gLfX彁"という読ませる気すらない綴りの作家が携わった二曲。シューゲイザーのようなゴシックな神聖性を纏う轟音が立ち上がる3曲目"Suicide Dream 1 (★gLfX彁 presents 'Suicide Dream 99 (sumthins grand as life n simple as a prsn)')"、早回しのボーカルカットアップやコラージュを取り入れて脈絡なく展開していく9曲目"You Won’t Need Me Where I’m Going (★gLfX彁 presents Love Remains [but In A Roomful Of Electronics With Water Dripping From The Ceiling])"のどちらも、今年聴いたアンビエントの中で屈指のクオリティだった。Discogsにはこの作品以外のリリースは登録されていないし、サンクラもなければXアカウントも何もない。そういった謎めいた作家の登場としても今年強く印象に残り、よく聴いた一作。

26. 野流 - 梵楽

27. Leonid & Friends - Street Player (Dimitri From Paris Remixes)

 YouTubeでカバー動画の投稿を中心に活動するファンクバンドLeonid & FriendsがChicagoのダンスクラシック"Street Player"をカバーしたものを、職人Dimitri From Parisがエディットしたシングル。今年出た中で最も情熱的で享楽的なディスコ。Buddhahouseさんが持ち時間のピークにかけるこの曲が本当に好きだった。本当に最高。

28. Mark Barrott - 蒸発 (Jōhatsu)

 バレアリックレーベルInternational Feel主宰にしてバレアリックサウンドの王Mark Barrottの最新作。ニューエイジの影響も感じさせる、日本の涼しい夜気の中を静かに漂うような鎮静的アンビエント。この手のアンビエントサウンドの中では決定版と言えるクオリティ。

29. Martyna Basta - Slowly Forgetting, Barely Remembering

 スロバキアアンビエントレーベルWarm Winters Ltd.からリリースされた作品。"東欧的"としか形容しようのない、どこか所在なさげな不協和音と、ASMR的に聴覚をくすぐる物音が特徴の夢幻的アンビエント。今年のアンビエントの中で重要な作品を挙げていったら5番以内には入るであろう傑作。

30. Emily Rach Beisel - Particle Of Organs

 バスクラリネットとその変調、おどろおどろしいボーカリゼーションによって異様な音風景を作り上げたアルバム。穏やかにメロディを吹いている瞬間もあれば独特な鳴りのドローン、あるいはエレキギターのフィードバックノイズに接近する瞬間もあり、バスクラリネットという楽器の音色の面白さを最大限に引き出している。Bendik Giskeのようなパーカッシブな瞬間もありつつ、強く緊迫したアンビエント/音響作品としても今年有数に面白かった。

31. Gia Margaret - Romantic Piano

 どこか強い悲哀と、"赦し"のようなものが感じられるロマンティックなピアノアンビエント集。サウンドの主体はメロディアスなピアノであるが、フィールドレコーディングのような録音空間の音が入っていてサウンドの中に奥行きがあり、単なるピアノ曲を聴かせるのではなく「ピアノが鳴っている空間の音」というアンビエント的な聴取を誘うのが面白かった。音楽性の根本にはロマン派クラシックと同じくらい吉村弘などの環境音楽、あるいは坂本龍一の存在が感じられ、ニューエイジリバイバル以降の音楽表現としても興味深い。

32. Mun Sing - Inflatable Gravestone

 Planet Muからのリリース。よく知らないのだがGiant Swanというグループのメンバーらしいブリストルの作家Mun Singのファースト。エクスペリメンタル・グライムといった風情のアグレッシブなリズムアプローチと強靭な金属のようなサウンドデザインが今年のDeconstructed Clubの中でも有数に面白かった。Deconstructed Clubがかつて現代グライムと言われていたというのも納得。

33. Nakibembe Embaire Group - Nakibembe Embaire Group

 Nyege Nyege Tapesからのリリース。Nakibembe村のEmbaireという巨大な木琴を演奏するグループのファーストアルバム。今年は非電子音楽・非ポップミュージックの方向を目指した年で、その過程で必然的に民族音楽への関心が高まったのだが、その個人的傾向とがっちり噛み合ったこともあってかなりお気に入りの一枚となった。単純に楽器自体のポコポコという音が乱打されることへの気持ちよさもあるが、ハウスミュージックで言うところのキックのようなリズムのグリッドはありつつも、気がついたら拍の頭が移動していたり、木琴のフレージングが複雑かつ重層的で構造の把握が難しく、とにかくその瞬間瞬間に鳴っているものへ没入するしかないという身体的な聴取を余儀なくされるところがとても好きだった。振り返ってみればMark Fellや∈Y∋のライブもそうだった気がして、カオティックなサウンドへ積極的に没入していくのが楽しい年だったとも言える。Gabber Modus Operandiの参加については正直なくても良かったが、一つ意味があるとすれば6曲目で、8分の刻みが欠落した4分のリズムのプリミティブな祝祭性を、構造化され洗練された電子音楽の方面から言い添えるような形で提示していた。

34. Rắn Cạp Đuôi Collective - *1

 ベトナムサイゴンサウンドアート・エクスペリメンタルミュージックのコレクティブRắn Cạp Đuôi Collectiveが、サイゴンのコレクティブ/レーベルNhạc Gãyからリリースしたアルバム。シューゲイザーのようなスケールが広く憧憬的なシンセサウンドに、Deconstructed Clubというかもはやブレイクコアにも片足を突っ込んだような、コラージュめいた目まぐるしい展開と激烈なビートがかっこいい作品。

35. Surusinghe - Get Flutey

 2022年にMall GrabのレーベルSteel City Dance Discsからデビューしたベースミュージック作家Surusingheが同レーベルから出したセカンドEP。強靭なベースとキックにそれぞれ異なるビートを乗せた破壊的ダンストラックが3つ。どのトラックも多様なジャンルが融解して有機的に結びついたような面白さがあり、この人にしか出せない妙味を感じる。正直全部かっこいいが特にお気に入りなのはアラビアっぽい笛の妖しいフレーズが印象的なダンスホールの3曲目 "Get Flutey"。2023年の暮れにはAD 93、2024年の頭にはTraTraTraxと著名レーベルから次々に声がかかっていて今後のリリースも楽しみ。

36. Éliane Radigue - Naldjorlak

 前衛音楽家Yoshi Wadaの息子Tashi Wadaが運営するレーベルSalternからのリリース。伝説的なドローン作家Eliane Radigueが初めて生楽器のために作曲したチェロの独奏曲"Naldjorlak"の、2006年・2020年の録音を合わせた作品。Eliane Radigueは私がStephan Mathieuと並んで一番好きなアーティストで、選出理由にしても2023年らしさとかは一切なく、この人が作品を出せばだいたい年間ベストには入れたくなってしまうというだけのことである。とはいえそういった感情を抜きにしても、チェロ一本とは思えない凄まじい圧と音響的な豊かさに満ちた単音ドローンではあるのだが……。弦が弓を擦り、内部の空洞で反響して音が出るというただそれだけのことを極限まで突き詰めたようなサウンドに浸っていると、音楽を聴くことの純粋に楽しい気持ちが蘇ってくる。

37. kurayamisaka - evergreen/modify Youth

少し焼けた手を離せないでいる
夏が足りないね 夏が足りないね

 2023年最高の曲はどれかと問われれば迷いなく「kurayamisakaのevergreen」と答える。日本のオルタナ/シューゲイズバンドKurayamisakaの次作に向けた先行シングルで、波打つような、儚くセンチメンタルなシューゲイズサウンドの中に、強い執着を窺わせる詞を歌う少女的な歌声が不穏に漂う。このギターは実際にアンプで鳴らしてみれば結構な音量が出ているはずなのだが、この楽曲中ではボーカルの後ろで抒情的に優しく鳴っているように聞こえる。逆に言えば優しく聞こえるだけで実際には轟音なのであって、ジャケットのめばち先生のイラストのようなどこか寂しげな表情であってもその内面には激しいものが渦巻いているというところにkurayamisakaの考える少女観を感じ、とてもいい観だなと思った。きっと次の夏にもこの曲を聴く。

38. François Jouffa & Susie Jung-hee Jouffa - Koh Samui Authentique: Thailand 1989-1998

39. Amaarae - Fountain Baby

40. Various Artists - 'Yebo! Rare Mzansi Party Beats from Apartheid's Dying Years' compiled by John Armstrong

41. Klara Lewis & Nik Colk Void - Full-On

42. Man Rei - Health

43. Ricardo Dias Gomes - Muito Sol

44. billy woods & Kenny Segal - Maps

45. Zaumne - Parfum

46. Ziúr - Eyeroll

47. Fabiano do Nascimento - Das Nuvens

48. Maria W Horn & Vilhelm Bromander - Earthward Arcs

49. MM & NKC - Grindhouse

50. yoshikimasuda - ビオトープ探して -Collective Edition-

51. Titi Bakorta - Molende

52. yolabmi - Internal Resurrection

53. Various Artists - Coco María presents Club Coco ¡AHORA! The Latin sound of now

54. Not Waving - The Place I've Been Missing

55. WLADIMIR SCHALL - ウルソネート (Urusonēto)

56. Yungwebster - Yungwebster

57. Liturgy - 93696

58. Titi Bakorta - Molende

59. D/P/I - Maldita Vida

60. Jeff Rosenstock - HELLMODE

61. pmxper - pmxper

62. Current Value - Beneath The Sonics

63. Aho Ssan - Rhizomes

64. Cleo Sol - Gold

65. Laurel Halo - Atlas

66. SKI - KRE

 

67. Onisme - a dead rose on the railway

68. Sampha - Lahai

69. littlegirlhiace - INTO KIVOTOS

70. Verraco - Escándaloo

71. muva of Earth - align with Nature's Intelligence

72. Adela Mede - Ne Lépj a Virágra

73. Isaac Soto - Sobrio

 

74. Jane Remover - Census Designated

75. Marina Herlop - Nekkuja

76. Reverend Kristin Michael Hayter - SAVED!

77. Rhyw - Mister Melt

78. Signal Quest - Hypermyth

79. スピッツ - ひみつスタジオ

80. Peter Power - New Dance Energy

81. Ellen Arkbro - Sounds While Waiting

83. SPRAYBOX - THE RAVING SIMULATOR

84. Wallace - Red, Yellow, Black

85. Evian Christ - Revanchist

86. Mister Water Wet - Cold Clay from the Middle West

 

87. Sprain - The Lamb As Effigy

88. vai5000 - sensory.

89. Kabeaushé - The Comming of Gaze

 ケニアのナイロビ出身のマルチミュージシャンKabeaushéによる、HAKUNA KULALAからのデビュー作にして傑作。ヒップホップを主なルーツとして持つようであるが、その辺にあった機材を適当にかき集めて作ったような、チープさとリッチさがまだらに入り混じり、ロックもハウスもダブステップもエレクトロも全部ごちゃ混ぜにしたような音作りも、自由自在に乱れ飛ぶボーカルのカットアップも、現行ヒップホップのタイトな美学とは性質が異なるもののように感じる。HAKUNA KULALAということでアフリカの地域性に注目してみても、アフリカの地域性どころか英米・ヨーロッパシーンからの影響も判然としない。80年代のヒップホップ黎明期の実験精神と自由さを2023年の音楽シーンに持ち込んだような、極めてユニークなアルバム。今年一番衝撃を受けた。

90. Kabeaushé - “HOLD ON TO DEER LIFE, THERE’S A BLCAK BOY BEHIND YOU!”

 2023年の最高傑作はKabeaushéの最新作とした。ゴスペルの神聖性を転化したような強烈な祝祭性、ファンク由来のグルーヴ感覚や有機的なアンサンブルを拒絶するような四分の刻みの感覚(=8分の刻みの排除)とあまりに自我の強すぎる楽器一つ一つの鳴り、全てが異様でありながらもすさまじい強度の音として鳴っていた。2023年のポップミュージックの最先端。

あとがき

 2023年は個人的にかなり豊作の一年で、その間に自分の音楽的嗜好もかなり拡張したように感じる。今年もたくさん面白い作品に出会っていきたい。
 最後に、私の周りの音楽リスナーに感謝を。皆さんから教えていただいた作品やレーベルが、私の探求の大きな助けとなっています。皆さんがいなければここまで幅広い作品群には出会えなかったでしょう。ありがとうございました。2024年もよろしくお願いします。

5/25

できたこと

  • 洗濯

雑感

5/22

 労働と家事が終わってさあ寝ようという時間になってKamaal Williamsの性加害報道が出た。何をしている?

5/23

 ここ数日の睡眠不足と雑な食事が祟ったのかのどの痛みと咳と発熱が一気に来て早退。健康な生活を心がけるべきだなと思った。

5/24

 一晩寝てとりあえず解熱。この日は歯医者とメンタルクリニックがあって元々有給を取っていたのでそのまま二つをこなし、ついでに事務作業も片づける。上司から数回コールが来ていたので確認したところ「倒れていないか心配だったので電話した」とのこと。ご心配をおかけしてすみません。人の心の温かさに感謝しつつ、ちゃんと連絡はしようと思った。
 ついでにサーティワンでアイスを食べたりスタバでチルしたり。スタバのアメリカンコーヒーは相当に受け付けない味で、もう一生飲むことはないだろうと思った。ドリップコーヒーの重油のような濃さは悪くない。
 帰ったら人と通話で午前一時くらいまで盛り上がった。

今日

 結局朝の4時まで起きていたので昼までは寝るだろう……と思っていたら8時半に起きてしまった。疲れてる時くらい10時間寝かせてほしい。
 起きておやつを食べつつガールズバンドクライを見た。あまりに衝撃的で久しぶりにアニメでぼろぼろ泣いた。仁菜がいじめっ子に対する復讐として相手を殴るのでも放送室のマイクで叫んだり歌ったりするのでもなく、自分の好きな音楽を大音量でかけるという方法を取ったことに正直かなり衝撃を受けた。ガールズバンドクライはロックをテーマにしたアニメでありつつも現場主義的な思想が薄く、現場の奇跡と同じくらいには録音の力を信じ、「人に届ける/届く」ということを第一に考えているところが本当に好き。一度録音された音楽とそこに焼き込まれた信念の力を信じるということにかけて、これ以上に真剣な作品は見たことがない。井芹仁菜の生き様から岡本太郎を思い出してTAROMANのOPを見直して涙ぐんだり(正しいことしか言ってない)、ラストシーンの告白からエーリッヒ・フロム『愛するということ』を思い出したりして余韻に浸った。
 体調を崩しただけで洗濯物が溜まったので洗濯も片づける。一度洗濯機を回して干そうとしたところで、ふと洗濯洗剤の投入口を見たら洗剤がべったりとした塊になり、本体に流れ込む箇所が塞がっていた。もしかして今までずっとこの塊に洗剤をかけているだけで洗濯物をちゃんと洗えていなかったのでは……?ぞっとしたので熱湯で周辺の塊を溶かしてリトライ。
 ついでにBandcampのディグ。学マスにハマっているのもあって週末には300件近いメールが溜まっている。これを消化している時間が一番楽しい。

結束バンド・00年代・トゲナシトゲアリ・ボカロ

 トゲナシトゲアリの音楽性が面白くて気に入っていたのだが、ガールズバンドクライ8話で退路を完全に断たれた人間たちの一個小隊とも言うべきバンドの在り方が確立したことで、結束バンドならびにぼっち・ざ・ろっく!が完全に過去のものとなったように感じた。
 このバンドの音楽性を説明するとしたら「ポストボカロ」的なオルタナロックと言える。特に一般的な単語ではないが、ずっと真夜中でいいのに。、ヨルシカ、長谷川白紙、なとり、NOMELON NOLEMONなど、ボカロPが関わったりそうでなかったりはしつつも、既存のJ-POPの中になかったボカロ曲的なエレメントをルーツに持つであろうアーティスト群をざっくりと説明する言葉である。King Gnuがデビューした当時「ボカロ曲っぽい」と言われていたのを思い出す人もいるかもしれない。主な特徴はそのメロディ・トラックの音数の多さや疾走感、アフロアメリカン的グルーヴ感覚の希薄さなど(最近だと美波が作曲を担当した「Luna say maybe」が分かりやすいかもしれない)だが、「ボカロっぽい」要素があれば何でもポストボカロに突っ込むことが出来るという点ではバズワードでもある。
 この音楽性についてはプロデューサーにより明言されている。

劇中の設定上2004年頃に生まれた桃香が、最も感度の高い時期、小学校の高学年あたりで音楽に興味を持つきっかけとなる曲と出会うとすると、2015年前後の動画やSNS上で観られた曲の中にあったはずで、おそらくは同級生よりかなり早熟気味であったろう桃香が反応しそうな楽曲、ここが旋律感やサウンドの質感の原点となっていて、その後スマホを手にしたであろう2017~2018年あたりから数年間のJ-POPど真ん中でないバンド系とボカロ系を聴き込みながらギターを手にし、作曲を始めた2020年前後辺りで “聴く曲” と “参照すべき曲” を別の耳で聴き分けはじめた、という仮説を立てました。そうすると、歴史上最速のBPMを更新するかのごとく高速化していったボカロP曲のスピード感と、転調を繰り返しながらめまぐるしく展開する高再生オリエンテッドなバンドサウンドをリアルタイムで浴びながら、推しが影響を受けたであろう過去のロックやジャズやR&BやEDMの歴史をコード進行ごとなぞった、才能溢れる女性ギタリストが表現したかったサウンド、というのを、トゲナシトゲアリの楽曲の基本コンセプトとしています。そこに、毎分めまぐるしく更新される動画にインスパイアされながら、検索機能をフルに活かして耳触りの触感を突き詰めながら書き綴る純文学風味のリリックを、思春期を通して夢中で掘り下げたであろう、桃香の熱量そのものを散りばめた歌詞、を組み合わせたうえで、アニメの世界線とは別軸のリアルな邦楽シーンに於いて、このインディーズバンドのプロデュースを僕が引き受けたとしたら、という量子力学的視点で、ヘビメタ由来でなく下北種でもない、変異した新種のガールズバンドとはどうあるべきか?を毎曲更新しながらトライし続ける、という指針で進めています。 https://au.utapass.auone.jp/lp/interview-kenji-tamai

 2015年~2018年辺りの音楽にルーツを持ち、詰め込まれたメロディそのものがリズム隊以上に楽曲のグルーヴを担うような音楽性は既存のバンドアニメ楽曲群と比べて明確に新しく感じられた。これは特にそういったアニメ群で参照されている音楽性が主に古典的な邦ロック(BUMP、アジカンetc……)や下北系、MyGO!!!!!であればメロコアなど、主に2000年代~2010年代前半的な音楽性を参照していて、結局ソングライティングの根本が"邦ロック"という連続性の中でしか語ることが出来なかったからだろうと思う。トゲナシトゲアリはそこにインターネットで特異な変異を遂げた音楽性を持ち込み、"音と言葉を詰め込む"という形で激情の表現を更新した。
 さらに面白いのはトゲナシトゲアリのメンバーがみな「歌ってみた」ないし「演奏してみた」界隈のプレイヤーであったことである。

全員が個人のSNSで公開していた〈歌ってみた/弾いてみた/叩いてみた〉動画をきっかけとしてオーディションに参加したという経緯からも、各々の実力の高さがうかがえる。 https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/37499

 ボカロシーンにおいて「歌ってみた」動画ないし歌い手という存在は原則的に軽視されているし、実際の数字を見てもボカロシーンのようにSNSで突如としてバズるような歌い手はほとんどいないが(いないことはないがバズが起きたとしてもその規模が小さい)、理名というユニークな歌声を持つシンガーの発掘に当たっては、このシーンの「多様なシンガーたちが日夜繰り広げる未成の表現の実験場」という性質が大きな役目を果たしたことになる。さらに言えば「なぜボカロ(的な)楽曲を人間が歌うのか」という問いについても、際立つ強烈な焦燥感と新しいエモーションという点で、新種の"邦ロック"を確立しているというアンサーを出していると言える。

 また、これは音楽性とは関係のない部分だが、最近の結束バンドはシンプルに面白くない。トゲナシトゲアリが実際に声優が楽器を演奏しているのに比べて、結束バンドは"結束バンド"とは言い条プレイヤーにアニメからの連続性がない。実質が長谷川育美さんと(作曲陣とは言っても)単なるサポートバンドであるところを、「ぼっち・ざ・ろっく!」作中の結束バンドと連続的な存在として見ることは、トゲナシトゲアリが出てきてしまった以上は正直もう難しい。内実を失った声優コンテンツ化が激しく、アニメーション作品としての耐久度がどんどん削れてきているので、早いところアニメーションの方を進めて話を畳んでほしいと思う。JAPAN JAM出演にしても、作中でのサクセス度が全然追いつかないままそんな大きなフェスでやってるのを見てもただむなしいだけという感じがする。

 あまりまとまらないまま最近考えていたことをつらつらと書いてみたが、結局のところトゲナシトゲアリは邦ロックの形を明確に更新していて、今後はこういった音楽性のバンドの存在感がどんどん増していくだろうと思ったのだった。今後の日本の音楽はもっと面白いことになりそうでとても楽しみにしている。

P.S. 余談だが、『ビビデバ』のヒット、トゲナシトゲアリの登場により自分の中で盛り上がっていたポストボカロ的な音楽性への関心に決定的な一打を打ったのは月村手毬『アイヴイ』だった。歌い手(特にsekai)的な歌唱表現とツミキのポストボカロ+残響系趣味の音楽性が高いレベルで融合した大名曲。

聴いたもの

大枠で行く。

アルビニ録音群

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 Steve Albiniの訃報という大きなトピックがあって、改めて人におすすめを教えてもらったりしながら聴き直していた。アルビニの乾ききった生々しい音作りはUKジャズムーブメントがひと段落して、BMTHやメタルなどエクストリームミュージックが盛り上がりつつあるという2024年以降の音楽シーンにおいて最重要クラスの価値を持ってくるのではないか……と考えていた矢先の訃報だったので残念でならない。
 Neurosisはアルビニ録音の作品だけ(?)サブスクに置いていなかった(上記の作品は聴いたがアルビニ録音ではない)。中心人物のスコット・ケリーがDVを自ら発表して引退した今、フェミニズム的な思想を持っていたアルビニがそういった作品群をパブリックに置いておくとは思えない……と言えば一見筋は通るが真偽のほどは分からない。
 上に挙げた作品は全て良かった(Shellac以外全部買ったしこれも来月に買う)。ダイナミックレンジが極めて広く、スピーカーで音量を上げて聴くとヘッドホンとは比べ物にならない迫力が出る。Shellac "To All Trains"は2024年最強のロックンロールとして君臨するだろうと思う。

ブラジル群

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 篠澤広『光景』があまりに良かったのだが、これがどういった組成の音楽なのか全然分からなかったので近そうなブラジル音楽に手を出した。Ivan Linsは70年代ブラジルのポップミュージック(MPB, Música Popular Brasileira)の代表的アーティスト。正直あまり掴めていないがコード進行の豊かさと洗練はブラジルっぽいなと思う。
 sohnos tomam contaはブラジルのシューゲイズアーティストで、ボサノバのリズムとシューゲイズの音像を融合した聴いたことのないサウンドでとても面白かった。今年の傑作の一枚。
 あとは適当にボサノバとか。

Lauryn Hill - The Miseducation of Lauryn Hill

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100best.music.apple.com

 Apple Musicのオールタイムベストアルバムランキングで1位を取っていたので聴き直した。確かに現代R&Bの基礎となっていそうなビートや力強いラップ、今では過剰さが逆に面白いようなプロダクションやコーラスワークが面白いが、これが全世界のアルバムの1位と言われたら納得はいかない。
 ランキングの話になるが、「全ての音楽ファンを満足させるランキングを作ることは不可能」「英米の名盤ランキングと見たら妥当」「ライトリスナー向けの古典作品の提案」などといった穏当な意見がいくつかTLを流れてきたが、私の心の中の井芹仁菜に聞いたら両手の小指を立てていたので物分かりのいい振りはやめにする。このランキングはダメである。そもそもこの飽和の時代に100枚きりという設定がおかしい。ローリングストーンを見習って最低でも500枚、もっと言えば10年単位で100枚ずつ出すくらいのところからやり直してほしい。

amass.jp

Bring Me The Horizon - POST HUMAN: NeX GEn

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 今年のサマソニのヘッドライナーを飾ることでも話題になったBring Me The Horizonの新譜。最高!
 上に書いたようにエクストリームミュージックの興隆に加えてハイパーポップやDigicoreといったシーンの"過剰さ"がキーワードになった時代において、Linkin ParkZebraheadなどミクスチャーロックをコアにしたバンドサウンドで表現可能なあらゆる種類の"過剰"が積み込まれた強烈なアルバム。間違いなく一つの時代精神を象徴しており、同じ方面でこれ以上のものを作るのは不可能だろうという確信に足る一枚。

Still House Plants - If I don’t make it, I love u

 ロンドンで今最も熱いオルタナバンド。定型のリズムに収まっているように感じられない、楽曲として成立しているのかも怪しいようなアンサンブルとメロディに囚われずに宙を舞うようなボーカルの中から激しいオルタナティブ精神が噴き出している。アルビニのいない世界にもこういったバンドは生まれてくるのだと思うとどこか安心できる。

Ghost Number - Dirt & Other Spells

 スペインのトロピカル・ゴス・バンド(超かっこいい)Ghost Numberの4th。病熱のような異様なテンションのまま突っ走るバンドアンサンブルを浴びるととてもではないが座ってはいられない。ラテン音楽の豊かさと迫力を思い知った。

5/10


できたこと

  • 洗濯

雑感

今日

 GW明けで5月病に陥っていたので久しぶりに有給を取った。有給最高!
 とは言ってもやることと言えば新譜ディグくらいしかない。二か月連続で開催されたBandcamp Fridayのせいでメールが数百件溜まっていたのでせこせこと消化した。次は九月らしく、当分リリースラッシュは来ないものと一安心している。
 新譜ディグ→昼寝(二時間くらいぐっすり寝た)→ディグとやっていると夕方に父親から食事の誘いがあったので喜んで受けた。親も自分も「飲酒するとパフォーマンスが落ちるし寝るのが遅くなる」という部分でコンセンサスが取れているので普通に定食屋。食後にスタバに行ってだらだら時間を潰し、ついでに母の日のプレゼントを相談した。スタバのプリペイドカードに決定。
 帰ってまた新譜チェック。今日はずっと音楽ばっかりだな……。

帰還

 大好きだった歌い手がVsingerに転生していた。去年の9月ごろからYouTubeTwitterのアカウントが消えていて足取りが掴めなくなっていたところだったので本当に嬉しい。
 このところ毎日アカペラのshortsを2つ上げているのだが、どれを聴いてもやはり一級品というか、好きなシンガーの知らない表情が見えてくる感じがしてとても充実感がある。近く本デビューがあって配信活動も始めるようなので、今のところはそれが一番の楽しみ。

#おはようVTuber

 個人勢のVTuberがよく使っているハッシュタグで、このタグが誰にとってどう役に立っているのか全然分かっていなかったのだが、つい先日に好きなVsingerが使い始めてからは見るたびに「ありがたや……」と思うようになった。好きな人が発信する口実になるのならなんだって嬉しい。

 先の転生したVsingerとは別人だが、この人も近く配信活動を開始するとのこと。楽しみ。

疑似恋愛

 性風俗キャストに入れ込んだ挙句に殺人に及んだとかいう男が発端になってあれこれと話題になっているのをちらっとだけ聞いて、そんな話は本当に聞きたくないと思った。理屈ではなく感情一本で。人が破滅していく様なんて聞きたくないしそんなことを引き起こすカルチャーも肯定したくないが、一方でVTuberの配信活動が疑似恋愛とどう違うのかと問われたら全然違わないとしか答えられない。私はカルチャーの繁栄に加担する一方でその悪しき側面を見たくないと願っている。そういう二面性のことを考えてしまう一件だった。

聴いたもの

D/P/I - Maldita Vida

 ラテン音楽の破壊的再構築。レゲトンは2023年の音楽のトレンドを飾ったが、本当の"ラテンアメリカ"の厚みはそんなものではないのだと、恐ろしいほどの低音の厚みと暴力的な音像を叩きつけてくる大傑作。レゲトンはもう聴かなくなるだろうが、その根底にあるトレシージョという3-2-2のリズムの暴力的な一面や、レゲトンという音楽がクンビアやダンスホールといったジャンルと分かちがたく結びついていることを提示したこの作品は今後重要性を増していくと感じる。

Sussan Deyhim & Richard Horowitz - Desert Equations: Azax Attra

 中東の歌唱?を取り込みながら第四世界的な近未来のビジョンを構築した作品。とにかく音が異様で、聴いていても"理解した"と感じられる、ある種の"甘美な"瞬間はほとんど来ず、とにかく超然としたサウンドに圧倒されるだけの鑑賞体験ができるという点で重宝している。FUNであるだけが鑑賞の楽しみではないのだと教えてくれる傑作。

ディグの成果

 私が良いと思うというよりも、読んでいる人に聴いてほしいと思うものをいくつか挙げる。疲れたので細かくは書かないが全部マストくらいの気持ちはある。そういうコーナー。

なんか変

分かるが変

東南アジアエクスペリメンタル。『女神の継承』に近い感じ、変というか異様

激しい

シューゲイズとポストハードコアの交点。ポピュラー化したシューゲイズのオルタナティブ

東南アジアスピリチュアル×東アフリカトライバルメタル

読経テクノ

激情ボカロポストハードコア

セカイ系激情ボカロ電子音楽

ストパン

長尺激サイケ

アンビエント

神聖

神秘

アンビエント/音響シーン集大成

現代性

現代のスライ

Sam Gendel的ジャズの達成

新居昭乃

神秘そのものの具現