まえがき
2023年ベストアルバムの記事を書こうと思ったのだが、体調の悪化や仕事、増え続けるリリースチェック量などに追われてとても書き切れる気がしなかったので、諦めて途中で出すことにした。
去年書いたものをそのまま出しているのでその辺りは留意してほしい。全90作。
これは何
2023年のベストアルバムをまとめた。
基本ルールは以下とする。
2023年1月~12月リリース(リイシュー等も含め、2022年に出たと自分が認識している作品)
聴いた回数では判断しない
だいたい順不同(買った順)
EPとアルバムを区別しない
買ったものに限る(そもそも買っていないものはほとんど覚えていないけれど……)
2023年ベストアルバム
1. Kali Malone (featuring Stephen O’Malley & Lucy Railton) - Does Spring Hide Its Joy
現代アンビエント シーンにおいてはあまりにハードコアすぎると思われるほどにストイックな3時間のドローン。チェロ・エレキギター のそれぞれに豊かな響きとサイン波の淡々とした響きが音量の配分を変えながら混じり合い、空間にゆらぎと緊張感を絶え間なく生み出している。今年のドローンはこれ一枚でよさそう。
2. Cocktail Party Effect - Fixing the Roof EP
上半期いちバキバキのテクノ。Deconstructed Clubを通過した非四つ打ちの攻撃的なリズムやノイジー なサウンド と、テクノの文法によるスムースに流れる要素の塩梅が絶妙。
3. Groupshow - Greatest Hits
Jan Jelinek とAndrew Peklerが参加した電子クラウトロック プロジェクトのファースト。フリージャズを経由したような軽やかなドラムがクラウトロック らしいグルーヴを生み出しつつも、電子音によるインプロビゼーション はしっかりと新鮮な音響を鳴らしていて聴き応えがある。
4. Nick León & Dj Python - esplit ep
レゲトン 勢の著名アーティスト二名による新譜。DJ Python による重力が強まったようなディープエレクトロの3曲目と、無色透明のアンビエント 空間にアフロパーカッションが泡立つような4曲目が先鋭的で素晴らしいクオリティ。
5. Santa Muerte - Eslabón EP
Hyperdubから出たやつ。これがデビューEPとのことだが、ダブステップ を基調にしつつもトライバルでパワフルなリズムトラックの音使いはN.A.A.F.I勢やレゲトン の影響を感じるし、エモーショナルなシンセのコードや飽和感はBorder Community やシューゲイザー に繋がっていくものを感じさせる。多様でカラフルなバックグラウンドが見事に作家性に結実した良い作品。
6. TMSV - Unforeseen Consequences
ダブステップ ・ジャングル系の作家TMSVが自分のレーベルPerfect RecordsからリリースしたEP。パワフルで重厚なダブステップ だが、ヘヴィさはそのままに140BPMの軽やかなビート感を両立しているところにジャングルの作家らしい巧みさを感じる。
TMSVはDeep Medi Musikから出したEPがとても良いのでこちらもおすすめしたい。
7. Tony Conrad / Arnold Dreyblatt / Jim O'Rourke - Tonic 19-01-2001
ドローンのライブ音源。Tony Conradの豊かかつ強烈にサイケデリック なドローンに打ちのめされる40分間。たぶん今年これ以上にビビッドな音は出てこない。
8. Two Shell - lil spirits
Hyperpop系テクノの始祖Two Shellの2023年作。フロアでプレイされる音楽としての神秘性を保ちつつ、キャッチーでコード感の強いメロディとボーカルでポップパンク的な直情性を押し出したバランス感覚の強く感じられる作品。
9. Ekorce - Puzzled
全然詳細を知らない。NYのThe Rust Musicなるレーベルからリリースされた作品で、サイケデリック で柔らかい音使いながらも粘りと弾性の強い高品質なダブステップ で、たぶんエレクトロニカ 出身なんだろうと想像させるまろやかにトリートメントされた音がユニーク。
10. DJ ojo - Coiled up
装飾音の多いUK Funky的なビートをDJ Python のディープ・レゲトン 的な湿度の高いダブアンビエント 空間に放った音。
ジャングル職人Coco Bryce が今年突如リリースしたインストヒップホップアルバム。UKダンスカルチャーの出自を持つせいなのか、上物のフレージングが独特で浮遊感のあるビートに仕上がっている。
12. PAS TASTA - GOOD POP
https://music.apple.com/jp/album/good-pop/1671957304
2023年上半期のベストポップミュージック。メンバー全員が一般的なポップミュージックから逸脱した音楽性を持ち、楽曲のサウンド もHyperpop以降のどこか異様で振り切れた感触であるにも関わらず、その根底には"ポップ"がある。これはおそらくメンバーの中では一番ポップ寄りのyuigotがある程度音を取りまとめているからと思われるのだが、良識を諦めない人が一人いるおかげで逸脱とポップさのバランスが取れた理想的なポップミュージックに仕上がっていると感じた。
余談だが、札幌で開催されたAvyssのパーティー に行ったら終盤のクライマックスで"river relief"がかかって大盛り上がりしていた。TEMPLIME"ネオンライト"やtofubeats "RUN REMIX"に続く現代のクラブアンセム はこれということだろう。
13. Kassem Mosse - workshop 32
ただただ良質なミニマルハウス。音一つ一つはDTM らしいというか、生音と比べると響きの貧しい中途半端な音なのだが、その中途半端な生々しさが逆にドープに響くような絶妙な音の配置がなされている。これはミニマルハウスというジャンルの面白い点だなと思った。
14. Lonnie Holley - Oh Me Oh My
Jagjaguwarからリリースされた美術家・音楽家 Lonnie Holleyの新作。ソウルミュージック ・スピリチュアルジャズ ・フリージャズ・カントリーなどを呑み込んだコズミックで雄大 なサウンド は20世紀アメリ カを生きた人間の歴史がそのまま音に結晶したようで、サウンド の人間的な迫力に圧倒される。個人的に今年を代表する一枚になりそう。
15. Model/Actriz - Dogsbody
NYのポストパン クバンドのデビューアルバム。No Wave 発祥の地ということもあってか、ダンサブルながらも鋭利でひりついたアンサンブルと、ほとんどノイズのようなギターの音色が他のポストパン クバンドとは一線を画す。
16. TRANCE BAND - Entrancing
SVBKVLTからのリリース。中国のTianzhuo Chenによって創始された流動的なプロジェクトで、Deconstructed Club的なアポカリプティックな電子音と、Swans的なリチュアルなストーナー ロックが融合した不穏なサウンド がとてもかっこいい。
17. DJ SMILEY BOBBY - Dhol Tasha Drum Exercises from Maharashtra
今年も強力なリリースの続くNyege Nyege Tapesの中でも、際立って強烈な一枚。西インドのマハラシュトラ 州出身のプロデューサーによる作品で、儀式用のドラムを電子音楽 として再解釈したものらしい。伝統音楽の力強さ・宗教性と、キックなり金物なり中東の打楽器なりが高BPM でめちゃくちゃに乱打されることによるレイヴミュージック的な熱狂とが一塊になって押し寄せてくるサウンド とに思考をぶっ飛ばされる。作品構成は26分程度のトラックが2つあって、それぞれの中で曲調とBPM が頻繁に切り替わるため、めちゃくちゃに破壊的なDJミックスとしても聴ける。レーベルが開催するフェスNyege Nyege Festivalの熱狂的な空気が思い浮かぶ最高の作品。
ちなみに本家のDhol Tasha Drumは以下の動画のような感じ。これを聴くとこのアルバムのサウンド にも納得感がある。
VIDEO
18. Doctor Jeep - Push The Body
ラテンテクノ・レゲトン の発信地TraTraTraxからのリリース。16分の刻みをキープしたままダブステップ からテクノにスイッチする1曲目、不敵なベースラインとスネアの乱打がテンションを徐々に煮立たせていくダンスホール の2曲目、ダークなサイレンのようなシンセ使いが暗いフロアに映えそうなレゲトン の3曲目……と比較的に遅いテンポをフィーチャーした楽曲が並ぶが、4曲目以降のリミックスでは打って変わってアップテンポで激しいサウンド がフロアを破壊しにかかる。特に5曲目のAquarianによる高速サイケバイレファンキと、6曲目のSam Bingaによるパワフルなテクノは白眉。
19. Flora Lux Victoria - Grief Prism
ノイズサウンド が凄まじく尖った鮮烈なデジタルシューゲイザー 。聴いた瞬間に衝撃を受けた。最近新作を出したがそちらもとても良かった。
20. Joe Koshin - HARD11
リリースにほとんど外れのない、優良UKG~ブレイクスレーベルHARDLINEの11枚目。どの曲もかっこいいが、特にDenham Audioと共作した二曲目は快楽性の塊みたいなビートで頭がおかしくなる。
21. EL irreal Veintiuno - Irrealidades
2023年上半期でも特に気に入った一枚。儀式めいた南米トライバルサ ウンドにデンボウとゲットーテクノが融合した、ジャケットのデザインそのままに、誰も見ていない空地で何か非現実的なものが現世に噴出してくるような猛烈なエネルギーを放つ作品。南米シーン全体で見てもきわめてユニークな作品だと思うが、自分以外ほとんど聴いている人を見なかった。
22. 100 gecs - 10,000 gecs
ハイパーポップデュオ100 gecsの新譜。ハイパーポップがハイパーポップたる所以、すなわち躁的なポップパンク要素をビビッドにこなしつつ、スカやスラッジメタル(?)など、近縁にありながらハイパーポップと結び付けられてこなかった音楽性を包摂しているところにさすがの音楽性の高さを感じた。8曲目のスレンテンについてはふざけているとしか思えないが、高密度でやかまし いアルバムの中にこういったユーモアが入ることで、アルバムに100 gecsらしさが加わってアルバムとしてのクオリティは上がっているように感じる。
23. ben bondy - club edits vol 1
3XL周辺のアンビエント 作家ben bondyによるヒップホップのクラブリミックス。 ダブアンビエント 的なテクスチャはそのままにレゲトン やバイレファンキのビートを取り込んだ、浮遊感がありつつも生々しく身体に響くビートが最高。札幌に来た時にプレイしていたトラックが入っているので、思い入れも込みで選出。この時はまさか今のようなよく分からない方向に行くとは想像できなかった。
24. Kate NV - WOW
25. How To Dress Well - What Remains (Remixes)
シカゴのアンビエント ポップ/R&B作家How To Dress Wellのアルバム"Love Remains"のリミックス盤。Claire Rousey・Nick León・Carmen Villainなど豪華なリミキサーが目を惹き、実際どの楽曲も素晴らしいアンビエント ノイズとして再構築されているのだが、特に面白いのは"★gLfX彁"という読ませる気すらない綴りの作家が携わった二曲。シューゲイザー のようなゴシックな神聖性を纏う轟音が立ち上がる3曲目"Suicide Dream 1 (★gLfX彁 presents 'Suicide Dream 99 (sumthins grand as life n simple as a prsn)')"、早回しのボーカルカットアップ やコラージュを取り入れて脈絡なく展開していく9曲目"You Won’t Need Me Where I’m Going (★gLfX彁 presents Love Remains [but In A Roomful Of Electronics With Water Dripping From The Ceiling])"のどちらも、今年聴いたアンビエント の中で屈指のクオリティだった。Discogsにはこの作品以外のリリースは登録されていないし、サンクラもなければXアカウントも何もない。そういった謎めいた作家の登場としても今年強く印象に残り、よく聴いた一作。
26. 野流 - 梵楽
27. Leonid & Friends - Street Player (Dimitri From Paris Remixes)
YouTube でカバー動画の投稿を中心に活動するファンクバンドLeonid & FriendsがChicagoのダンスクラシック"Street Player"をカバーしたものを、職人Dimitri From Paris がエディットしたシングル。今年出た中で最も情熱的で享楽的なディスコ。Buddhahouseさんが持ち時間のピークにかけるこの曲が本当に好きだった。本当に最高。
28. Mark Barrott - 蒸発 (Jōhatsu)
バレアリックレーベル International Feel主宰にしてバレアリックサウンド の王Mark Barrottの最新作。ニューエイジ の影響も感じさせる、日本の涼しい夜気の中を静かに漂うような鎮静的アンビエント 。この手のアンビエント サウンド の中では決定版と言えるクオリティ。
29. Martyna Basta - Slowly Forgetting, Barely Remembering
スロバキア のアンビエント レーベルWarm Winters Ltd.からリリースされた作品。"東欧的"としか形容しようのない、どこか所在なさげな不協和音と、ASMR的に聴覚をくすぐる物音が特徴の夢幻的アンビエント 。今年のアンビエント の中で重要な作品を挙げていったら5番以内には入るであろう傑作。
30. Emily Rach Beisel - Particle Of Organs
バスクラリネット とその変調、おどろおどろしいボーカリゼーションによって異様な音風景を作り上げたアルバム。穏やかにメロディを吹いている瞬間もあれば独特な鳴りのドローン、あるいはエレキギター のフィードバックノイズに接近する瞬間もあり、バスクラリネット という楽器の音色の面白さを最大限に引き出している。Bendik Giskeのようなパーカッシブな瞬間もありつつ、強く緊迫したアンビエント /音響作品としても今年有数に面白かった。
31. Gia Margaret - Romantic Piano
どこか強い悲哀と、"赦し"のようなものが感じられるロマンティックなピアノアンビエント 集。サウンド の主体はメロディア スなピアノであるが、フィールドレコーディングのような録音空間の音が入っていてサウンド の中に奥行きがあり、単なるピアノ曲 を聴かせるのではなく「ピアノが鳴っている空間の音」というアンビエント 的な聴取を誘うのが面白かった。音楽性の根本にはロマン派クラシックと同じくらい吉村弘などの環境音楽 、あるいは坂本龍一 の存在が感じられ、ニューエイジ ・リバイバル 以降の音楽表現としても興味深い。
32. Mun Sing - Inflatable Gravestone
Planet Mu からのリリース。よく知らないのだがGiant Swanというグループのメンバーらしいブリストル の作家Mun Singのファースト。エクスペリメンタル・グライムといった風情のアグレッシブなリズムアプローチと強靭な金属のようなサウンド デザインが今年のDeconstructed Clubの中でも有数に面白かった。Deconstructed Clubがかつて現代グライムと言われていたというのも納得。
33. Nakibembe Embaire Group - Nakibembe Embaire Group
Nyege Nyege Tapesからのリリース。Nakibembe村のEmbaireという巨大な木琴を演奏するグループのファーストアルバム。今年は非電子音楽 ・非ポップミュージックの方向を目指した年で、その過程で必然的に民族音楽 への関心が高まったのだが、その個人的傾向とがっちり噛み合ったこともあってかなりお気に入りの一枚となった。単純に楽器自体のポコポコという音が乱打されることへの気持ちよさもあるが、ハウスミュージックで言うところのキックのようなリズムのグリッドはありつつも、気がついたら拍の頭が移動していたり、木琴のフレージングが複雑かつ重層的で構造の把握が難しく、とにかくその瞬間瞬間に鳴っているものへ没入するしかないという身体的な聴取を余儀なくされるところがとても好きだった。振り返ってみればMark Fellや∈Y∋のライブもそうだった気がして、カオティックなサウンド へ積極的に没入していくのが楽しい年だったとも言える。Gabber Modus Operandiの参加については正直なくても良かったが、一つ意味があるとすれば6曲目で、8分の刻みが欠落した4分のリズムのプリミティブな祝祭性を、構造化され洗練された電子音楽 の方面から言い添えるような形で提示していた。
34. Rắn Cạp Đuôi Collective - *1
ベトナム はサイゴン のサウンド アート・エクスペリメンタルミュージックのコレクティブRắn Cạp Đuôi Collectiveが、サイゴン のコレクティブ/レーベルNhạc Gãyからリリースしたアルバム。シューゲイザー のようなスケールが広く憧憬的なシンセサウンド に、Deconstructed Clubというかもはやブレイクコア にも片足を突っ込んだような、コラージュめいた目まぐるしい展開と激烈なビートがかっこいい作品。
35. Surusinghe - Get Flutey
2022年にMall GrabのレーベルSteel City Dance Discsからデビューしたベースミュージック作家Surusingheが同レーベルから出したセカンドEP。強靭なベースとキックにそれぞれ異なるビートを乗せた破壊的ダンストラックが3つ。どのトラックも多様なジャンルが融解して有機 的に結びついたような面白さがあり、この人にしか出せない妙味を感じる。正直全部かっこいいが特にお気に入りなのはアラビアっぽい笛の妖しいフレーズが印象的なダンスホール の3曲目 "Get Flutey"。2023年の暮れにはAD 93、2024年の頭にはTraTraTraxと著名レーベルから次々に声がかかっていて今後のリリースも楽しみ。
36. Éliane Radigue - Naldjorlak
前衛音楽家 Yoshi Wadaの息子Tashi Wadaが運営するレーベルSalternからのリリース。伝説的なドローン作家Eliane Radigueが初めて生楽器のために作曲したチェロの独奏曲"Naldjorlak"の、2006年・2020年の録音を合わせた作品。Eliane Radigueは私がStephan Mathieu と並んで一番好きなアーティストで、選出理由にしても2023年らしさとかは一切なく、この人が作品を出せばだいたい年間ベストには入れたくなってしまうというだけのことである。とはいえそういった感情を抜きにしても、チェロ一本とは思えない凄まじい圧と音響的な豊かさに満ちた単音ドローンではあるのだが……。弦が弓を擦り、内部の空洞で反響して音が出るというただそれだけのことを極限まで突き詰めたようなサウンド に浸っていると、音楽を聴くことの純粋に楽しい気持ちが蘇ってくる。
37. kurayamisaka - evergreen/modify Youth
少し焼けた手を離せないでいる
夏が足りないね 夏が足りないね
2023年最高の曲はどれかと問われれば迷いなく「kurayamisakaのevergreen」と答える。日本のオルタナ /シューゲイズバンドKurayamisakaの次作に向けた先行シングルで、波打つような、儚くセンチメンタルなシューゲイズサウンド の中に、強い執着を窺わせる詞を歌う少女的な歌声が不穏に漂う。このギターは実際にアンプで鳴らしてみれば結構な音量が出ているはずなのだが、この楽曲中ではボーカルの後ろで抒情的に優しく鳴っているように聞こえる。逆に言えば優しく聞こえるだけで実際には轟音なのであって、ジャケットのめばち先生のイラストのようなどこか寂しげな表情であってもその内面には激しいものが渦巻いているというところにkurayamisakaの考える少女観を感じ、とてもいい観だなと思った。きっと次の夏にもこの曲を聴く。
38. François Jouffa & Susie Jung-hee Jouffa - Koh Samui Authentique: Thailand 1989-1998
39. Amaarae - Fountain Baby
40. Various Artists - 'Yebo! Rare Mzansi Party Beats from Apartheid's Dying Years' compiled by John Armstrong
41. Klara Lewis & Nik Colk Void - Full-On
42. Man Rei - Health
43. Ricardo Dias Gomes - Muito Sol
44. billy woods & Kenny Segal - Maps
45. Zaumne - Parfum
46. Ziúr - Eyeroll
47. Fabiano do Nascimento - Das Nuvens
48. Maria W Horn & Vilhelm Bromander - Earthward Arcs
49. MM & NKC - Grindhouse
50. yoshikimasuda - ビオトープ 探して -Collective Edition-
51. Titi Bakorta - Molende
52. yolabmi - Internal Resurrection
53. Various Artists - Coco María presents Club Coco ¡AHORA! The Latin sound of now
54. Not Waving - The Place I've Been Missing
55. WLADIMIR SCHALL - ウルソネート (Urusonēto)
56. Yungwebster - Yungwebster
57. Liturgy - 93696
58. Titi Bakorta - Molende
59. D/P/I - Maldita Vida
60. Jeff Rosenstock - HELLMODE
61. pmxper - pmxper
63. Aho Ssan - Rhizomes
64. Cleo Sol - Gold
65. Laurel Halo - Atlas
66. SKI - KRE
67. Onisme - a dead rose on the railway
68. Sampha - Lahai
69. littlegirlhiace - INTO KIVOTOS
70. Verraco - Escándaloo
71. muva of Earth - align with Nature's Intelligence
72. Adela Mede - Ne Lépj a Virágra
73. Isaac Soto - Sobrio
74. Jane Remover - Census Designated
75. Marina Herlop - Nekkuja
76. Reverend Kristin Michael Hayter - SAVED!
77. Rhyw - Mister Melt
78. Signal Quest - Hypermyth
79. スピッツ - ひみつスタジオ
80. Peter Power - New Dance Energy
81. Ellen Arkbro - Sounds While Waiting
82. Purelink - Signs
83. SPRAYBOX - THE RAVING SIMULATOR
84. Wallace - Red, Yellow, Black
85. Evian Christ - Revanchist
86. Mister Water Wet - Cold Clay from the Middle West
87. Sprain - The Lamb As Effigy
88. vai5000 - sensory.
89. Kabeaushé - The Comming of Gaze
ケニア のナイロビ出身のマルチミュージシャンKabeaushéによる、HAKUNA KULALAからのデビュー作にして傑作。ヒップホップを主なルーツとして持つようであるが、その辺にあった機材を適当にかき集めて作ったような、チープさとリッチさがまだらに入り混じり、ロックもハウスもダブステップ もエレクトロも全部ごちゃ混ぜにしたような音作りも、自由自在に乱れ飛ぶボーカルのカットアップ も、現行ヒップホップのタイトな美学とは性質が異なるもののように感じる。HAKUNA KULALAということでアフリカの地域性に注目してみても、アフリカの地域性どころか英米 ・ヨーロッパシーンからの影響も判然としない。80年代のヒップホップ黎明期の実験精神と自由さを2023年の音楽シーンに持ち込んだような、極めてユニークなアルバム。今年一番衝撃を受けた。
90. Kabeaushé - “HOLD ON TO DEER LIFE, THERE’S A BLCAK BOY BEHIND YOU!”
2023年の最高傑作はKabeaushéの最新作とした。ゴスペルの神聖性を転化したような強烈な祝祭性、ファンク由来のグルーヴ感覚や有機 的なアンサンブルを拒絶するような四分の刻みの感覚(=8分の刻みの排除)とあまりに自我の強すぎる楽器一つ一つの鳴り、全てが異様でありながらもすさまじい強度の音として鳴っていた。2023年のポップミュージックの最先端。
あとがき
2023年は個人的にかなり豊作の一年で、その間に自分の音楽的嗜好もかなり拡張したように感じる。今年もたくさん面白い作品に出会っていきたい。
最後に、私の周りの音楽リスナーに感謝を。皆さんから教えていただいた作品やレーベルが、私の探求の大きな助けとなっています。皆さんがいなければここまで幅広い作品群には出会えなかったでしょう。ありがとうございました。2024年もよろしくお願いします。