雑記

__blurry_のおぼえがき

5/3

できたこと

何もした覚えがない。

雑感

上級喫茶エクスペリエンス

 昨日は日記を書いていたら午前二時になってしまい、そこから寝て起きたら12時前だった。休日らしく怠惰に過ごしても罪悪感が湧いてこないので連休はすごい。

 起きるとビリヤニの気分だったので食べに出かけたのだがあいにくの休みで(ここ一か月ほどずっとそう)、仕方がないので近くで油そばを食べた。"油そば"という感じの油そばで言うことも特にない。

 食後に近くの喫茶店に入った。なかなかおしゃれな佇まいで、店内にはターンテーブルとレコード棚がある。ステレオからはPortisheadがかかっていて、曲を選べば確かにチルでいい具合なのだが、どうもレコードプレーヤーから流れているわけではないのが謎だった。客の入りが多い時間帯には悠長に片面20分しか聴けないようなメディアなど使っていられないのかもしれない。
 コーヒーの値段に目を剥いた。最低750円、高いものは1500円もする。ワンオペの店主こだわりの品種とドリップということでこういう価格設定なのだろうか。エチオピアのコーヒー(1000円)を頼んだ。カードがついていたので以下に引用する。

Pride of Gesha 2020 Auction Lot
Farm Reserve GVA.8 Oma Gesha 1931
"jasmine, lemongrass, hibiscus, hazelnut
Country: Ethiopia
Farm: Gesha Village
Altitude: 1909-2069masl
Processing system: Natural

 ゲシャという品種らしい。以下のサイトに大まかな説明が載っていた。

real-coffee.net

ゲシャ 1931は、ジャスミン、ローズ、ピーチ、アプリコットのような繊細で柔らかいフレーバーを特徴としています。それにモカのようなフレーバーが加わることで、独特のフレーバーを生み出しています。

 ……ということらしいが、飲んだ感想としては正直よくわからなかった。まあ普通に薄めのコーヒーという感じ。コーヒーへの解像度の低さが哀しい。
 クラフトチョコレートがメニューにあったので試しに一枚頼んだ。

 結果としてはコーヒーもチョコレートもよくわからないという感じで終わった。高級嗜好品はどういうゲームをやっているのか理解するまでに時間がかかりがち。もし本当にコーヒーのゲームを理解しようと思ったら高い豆を一袋買って分かるまで飲み続ける必要がありそう。
 さてコーヒーとチョコレートで贅沢な時間を……と思ったのだが、COVID-19の感染対策で滞在時間は一時間までとのこと。一時間もいたらその先何時間いたってもう関係ないだろうし、回転率が上がれば感染者が来店する確率も上がるだろうと思うのだが……。結局そこで斜線堂有紀「百合になる値打ちもない」を読んでいたら涙が出てきそうになったので慌てて会計を済ませて店を出た。喫茶店に一時間弱で2300円……喫茶店に一時間弱で2300円か……。品物の価格に目をつぶっても、"喫茶店"のエクスペリエンスとして一時間弱でこの値段というのは正直頷けないなと思った。

エルデンリング2

 家に帰った後はエルデンリングの二周目を進めた。マルギットを倒したところから開始し、ゴドリックを軽くのめし、カーリアとレアルカリアを平行で着手しつつ、一周目にやり損ねたNPCイベントを回収。オープンワールドの二周目はめんどくさいという発見があった。もう永遠の都とか地下墓とかやりたくないな……。

聴いたもの

Congotronics International - Where's The One?

 DeerhoofJuana Molina、Kasai Allstars、Konono No.1、Skeletons、Wildbirds & Peacedrumsという面々で構成されたスーパーグループによるアルバムで、コンゴの伝統音楽と西半球(本初子午線から西側の半球)のエクスペリメンタルロックを融合することで新しい音楽言語の創造を目指したとのこと。正直Juana Molina以外誰一人分からないし、Juana Molina自体もよく理解できていないのだが、ともかく良かった。ドラムのサウンドが独特で、アフロビートのようでありながら、Fela kutiのジャズに影響されたそれとは明らかに違う語法で呪術的にビートを刻んでいる。これまでいまいち理解できていなかった「アフロロック」という枠組みの面白さに気づかせてくれたアルバム。

Yellow Swans - Drowner Yellow Swans

 ポートランドのノイズドローンユニットYellow Swansの2007年作。William Basinskiのピアノアンビエントにあるような繊細なセンチメンタリズムを、その繊細さはそのままにノイズで表現したようなサウンド。相互の人から教えてもらったのだが、凄まじい傑作だった。他のアルバムも聴くことに決めた。

読んだもの

斜線堂有紀 - 『百合である値打ちもない』

Amazon.co.jp - 彼女。 百合小説アンソロジー | 相沢 沙呼, 青崎 有吾, 乾 くるみ, 織守 きょうや, 斜線堂 有紀, 武田 綾乃, 円居 挽 |本 | 通販

 百合小説アンソロジー『彼女。』に収録された作品。女性FPSプロゲーマー二人組の関係性が"フィクション"として受容されることのグロテスクさから"百合"にアプローチしているのだが、この問題系については正直なところわざわざ小説で読まなくても知っている。
 個人的に面白かったのはこの小説の問いの立て方。作中ではルッキズムとカミングアウトの問題が特にフォーカスされるのだが、どちらも「外部からの値付け/自己肯定」という二項対立の系で捉えられている。カミングアウトもルッキズムも、正直なところ作中ではほとんど何も解決していない(というかそれらの問題系に対して暴挙を働いている)し、解決への糸口もほとんど見えていないのだが、あくまでも"自己肯定"という系の中では解決しているように見える(見せている)。あくまでも女二人の感情と関係性、それを取り巻く外部のまなざしにだけフォーカスした書き方は半ばパンクだなと思った。

5/2

できたこと

  • 洗濯
  • 料理

雑感

一昨日

 GW1日目。円山公園に出て桜を見た。

 これはたぶんオオヤマザクラ(別名エゾヤマザクラ)のことと思われる。遠山の金さんのメインテーマを思い浮かべつつ公園と北海道神宮に続く参道を歩いた。

 北海道神宮の中にも花見スポットがあるのだが、時勢もあって禁止されているのかブルーシートを広げている人は見当たらなかった。様々な品種の桜が生えている境内をうろうろと歩いた。

 恐ろしいほど密に咲き固まった花を見ながら、このような色このような咲き方をするのはなんとなく決まっているからではなく、複雑なメカニズムと進化の過程、妥当な理由などのロジカルな裏付けがあるのだろうなとぼんやり考えた。それを解釈することがフロムソフトウェアの解釈と繋がり、フロムソフトウェアの"世界を作る"という志はすごいなどとも思った。私はフロムについてはろくに解釈もせずに遊んでいるくらいの人間なので、花も「咲いているな」と写真を撮ってそれきりにしてしまったけれど……。

 それから屋台を見て回った。

 何も買わずに面白がるだけ面白がって帰った。帰りにそば屋で天ぷらそばを頼み、天ぷらは100点だがそばは0点だった。

昨日

 GW2日目。基本情報の試験は午前だけちょっとやっていったら午後試験が6点足りず落ちた。まあ落ちるだろうと思っていたし、半年後にもう一回受ければいいやという気持ちになっていたので特段思うこともなく会場を後にする。
 わざわざ出てきて試験だけ受けて帰るのも癪だったので、桜を見に中島公園へ。TLを見ていても誰一人春とか桜とかの話をしていないと思ったが、考えれば内地の春は1か月も前に到来していたものらしい。札幌は未だに気温が20度を切っているし、特に昨日は雨も降って10度前後まで気温が落ちていたように思う。

 ソメイヨシノがとても綺麗だった。北海道に多い品種はエゾヤマザクラなのだが、この種の桜は開花して1週間と経たずに葉が出てくるため、遠目にも色が濁っていて見栄えが悪い。

 帰り道に知人に会いに行った。実験音楽の話が通じる20個以上年上の人で、週1くらいで会っては3時間ほど話しているのだが、話の流れでVTuberに言及すると相手も同じくVのリスナーであることが判明した。私がみけねこさんをまだ追い続けていると言っても特段驚いたりバカにしたりしてこず、配信カルチャーに対するアティチュードの近さを感じた。その後承認カルチャーとアテンションエコノミーにより極端に加速された人間性、『推し、燃ゆ』、P丸様。、最近のボカロシーン、神椿への悪口などの話を(ほぼ一方的に)した。現実でこんな話を人にするとは思わなかった。音楽については灰野敬二と東南アジアのフィールドレコーディング・EM Recordsの作品についていくつか教えてもらい、こちらからも最近の新譜情報を提供した。

 夜になって晩ご飯を作らないとな……とナスの揚げびたしを作っていたら八時半になってしまい、この時間から副菜だけの夕飯を食べるのも……とスーパーに行って刺身と適当な野菜を買い込んだ。夕飯を済ませて寝る用意が終われば今度は唐揚げの仕込み。生活がいい加減。

来訪

 GW3日目。両親が来るのでそれまでの間に唐揚げのタネを揚げて試食。最後にマヨネーズを入れたのが失敗で、あからさまに味が過剰だった。胡椒を多めに入れつつ醤油を少し減らすとちょうどいい塩梅になりそう。
 両親がきてコストコで買った炭酸水とむらさき醤油を持ってきてくれた。ありがたい。それから雑談をしつつ父親に私のデスク周りの配線を綺麗に整えてもらった。こちらから頼んだわけではないが、気になって仕方がなかったとのこと。母親には段ボールを片づけてもらった。GWに帯広に帰る計画が一度も出なかったことについて話したところ、父親が先月COVID-19陽性で、まだ後遺症により嗅覚の大部分が戻っていないと明かしてくれた。マスクを取った頬が赤くむくんでいた。

切腹

 両親が帰ったあとに観た。やっぱり面白い。全てのカットが映像として美しく決まっている。
 作中では「武士の面目など所詮はその表を飾るもの」と言われていたが、これは本当にその通りだと思った。みけねこさんがホロライブから放逐されてすぐに元の名義で配信活動を再開したことを重ねて考えるのが比喩としても正しいのかは分からないが、一度転げ落ちたからといって潔く腹を切って終わることだけが人生とはどうしても私には思われない。

中庸

 インターネットにいると「そんなうるさい言葉を使わないとものの一つも言えないんだろうか」と思うことがたびたびある。それがスタイルだというなら特段止めはしないが、別に誇張しなくても何かを口にすることはできるよと思う。むろん私も昔はとてもとてもうるさい言葉遣いをしていた側で、それを通り過ぎたからこそ言えることではあるのだけれど……。

聴いたもの

Zeal and Ardor - Zeal and Ardor

 相互が聴いていて楽しそうだったのでつられて聴いた。爆音のギターの上でボーカルがめちゃめちゃに叫んでいてとてもかっこいい。ブラックメタルに入るらしいが、後述するバンドと音楽圏が近いように思われ、ヘヴィネス圏のジャンル分類はよく分からないな……と思った。

SOUL GLO - Diaspora Problems

 フィラデルフィアスクリーモ/ハードコアパンクバンドSoul Gloの最新作。爆音のギターの上でボーカルがめちゃめちゃに叫んでいてとてもかっこいい。こちらは楽曲のコンポジションが複雑で、ラップのように解釈できたり、この手のジャンルではあまり聴かれないコード進行が出現したりと音楽的バックグラウンドの豊かさが感じられる。これは先月買った作品でもう何度か聴いているのだが全然飽きない。

DEVIL MASTER - Ecstasies of Never Ending Night

 MerzbowやThe Dillinger Escape PlanMastodon、Neurosisなどが作品をリリースする名門Relapse Recordsからの作品。爆音のギターの上でボーカルがめちゃめちゃに叫んでいる……わけではなく、こちらはグロウルが主体。ギターの雰囲気が80年代メタルっぽいのと、表現したいエモーションが直情的で、それがコード進行に露骨に表れているあたりはパンクとして聴くこともできて、これはかなり親しみやすい類のヘヴィネスだなと感じた。

Innode - Syn

 ノイズの気分が高まってきているので去年の暮れに買ったアルバムを改めて聴き直した。Stefan Némethなる人物を中心とするウィーンのエクスペリメンタル系プロジェクトで、今作ではインダストリアルノイズとリズム/ビートの融合あるいは親和性がフォーカスの対象となっている。
 このアルバムの良いところはちゃんと踊れるタフなビートがあること。凄まじい圧のディストーションサウンドがありつつ、その快楽性を邪魔しない形で呪術的なビートが絡んでくる様はとても気持ちがいい。買っておいて良かった作品。

Helm - Axis

 眠いので細かくは書かないが、ノイズ曲はかっこいいけれどアンビエントが中途半端で全然面白くなく、アンビエントのターンになるたびに集中力が切れた。人には勧めない。

読んだもの

 百合小説アンソロジーを読み進めている。それ以外は特になし。

4/25

できたこと

  • 皿洗い
  • 炊飯器をセット
  • インターネット料金の支払い
  • カレーを作る

雑感

拡張

 金曜日は会社の飲み会に行った。どうも知らない人から知っている人の声がするなと思って訊いたところ、レーシック手術を受けて眼鏡を外したとのこと。眼鏡でしか人を見ていないことが分かる。元から人間の顔をよく覚えられないし、特徴的なパーツとそれ以外のパーツの位置関係で覚えているというのが考えられる。
 社内の同期飲みだと思っていたらグループ会社の合同新人飲み会で、学級一個分くらいの知らない人が集まっていたのには驚いた。最近は在宅ワークや友達を家に頻繁に呼んでいるということもあって世界観がかなり自閉的になっていたので、知らない人の方が多い集団というのはそれだけで気疲れしたのだが、やはりというか、話してみるとやっぱり面白いなと思った。互いの素性も人となりも知らない人が、「どうせもう二度と会うことはないから(原文ママ)」とあけすけにいろんなことを喋ってくれる。特に面白かったのは、一番最初に喋った人が口にしていた、「無趣味だから勉強以外休みの日にすることがない」という言葉。趣味がなくても勉強なんかしないだろうと思うし、その点すごく勉強に向いた性格だと思う。料理でも始めたらどうかとは言わなかった。きっと資格を取る方が昇進の役に立つだろうから。
 飲み会から一晩明けた土曜日は朝からずっと気分が下がっていた。他のみんなは同じ方向に迷いなく歩いているのに、自分だけが誰もいない広い空間にふらふらしているような所在なさが付きまとい、午前中はずっと陰気なことばかり考えていた。
 仕方がないので昼食がてらランニングに出かけて、これがよく効いた。走っている間も当然もんもんと悩んでいたのだが、次第に息が上がってくると悩みにリソースを割り振ってなどいられなくなる。ついには足が止まるのだが、肩で息をしている間はどうやっても思考が止まる。呼吸を整え、改めて走り出すと、悩みが回路を抜けたかのようにするっと別の考え方が思い浮かんできた。要するに人間関係が急激に拡大して疲れているだけなのだった。大きさの決まったプールで気楽に泳いでいただけだったのが、飲み会を機に突然容積と水量が増えたものだから岸に掴まれないでいる、くらいのことでしかない。そうと分かったので昼食を摂ってすぐ家に帰り、シャワーを浴びて昼寝を決め込んだ。三時間寝たら回復した。

Somewhere Comforting

 家の近くで何時間居座っても怒られない喫茶店を見つけた。これまでは家で勉強しようとしていたのだが、当然捗るわけもなくずっと音楽を掘るか寝るかTwitterを見るかしかしていなかった。来週の資格試験も確実に落ちるものとして一切追い込みなどもしていない。しかし土日に毎日閉店まで居座ってもいいと店主からお墨付きをいただけたことで、その次の試験はなんとかなりそうな見込みが出てきた。次回から頑張る。

コミット

 Bandcampのカートを清算した。しめて4万円くらい。本当はプラス一万円分くらい欲しいものがあったのだが、丁寧に一個一個聴き直して本当に欲しいか吟味し直して絞った。それで一万円しか絞れないというのもなかなかだが……。
 今月の賭けはBorisとJon Hassell。アルバムを二枚ずつ買ったので聴くのが楽しみ。

聴いたもの

ヰ世界情緒 - ギャラリア(cover)

 2022年のVtuber圏から出てきた歌唱パフォーマンスの中で最良の作品。ヰ世界情緒さんはその歌唱に宿る剥き出しの少女性と繊細さ、クールな世界観が魅力のシンガーだと思っていたが、このカバーにおいては楽曲が許容する歌唱表現の幅を最大限まで使い倒し、少女性、力強さ、獰猛さ、歌唱を鍛え上げてきたシンガーとしての誇り等々、ヰ世界情緒さんを構成する全てのものが注ぎ込まれた凄まじい歌唱がなされている。
 全存在を注ぎ込んだようなこの歌唱を聴いた後では以前のカバーはもう聴けないなと感じた。それほどまでに表現の幅に違いがある。

Pusha T - It's Almost Dry

music.youtube.com

 ブロンクスのラッパーPusha Tの最新作。今年のヒップホップ最良の収穫の一枚になるだろうという確信がある。
 プロデュースはKanye WestPharrell Williamsの二人だと言えばもう説明は要らないだろうが、当代最高のビートメーカー二人がその創造性を存分に発揮し、一分の隙もなくフレッシュで新規性の高いビートが頭からつま先まで詰まっている。ただただ最高のヒップホップ。リリースはストリーミングかmoraのぼったくりみたいな価格のハイレゾしかない。早くCDを出してほしい。

読んだもの

今日は特になし。

4/17


できたこと

  • 配達の受け取り
  • 皿洗い
  • 洗濯

雑感

パーティ

 金曜日は久々にパーティに行った。20年続くテクノパーティーFuture Terrorの札幌公演で、数か月前に告知が出た時点で「まあ知名度の高いパーティーらしいし……」と即座に予約したもの。
 結論としてはあんまり合わなかった。テクノの解像度が低くて同じような音がずっと鳴り続けているようにしか聞こえなくて途中で飽きてしまい、眠気が訪れたところでリタイア。三人いたうち途中の二人まで、時間にして朝の三時くらいまではけっこう良かったので、最後の人が良くなかったのかもしれない。その人がたぶん今回の主賓、DJ Nobuだったと思うのだけれど……。三人が三人ひげもじゃの男で、タイムテーブルの掲示もないため全然わからない。寝てて店員の人に起こされた。
 得るものがなかったわけではなくて、帰ってBandcampのディグを再開したらテクノ系の音がフロアでどういった鳴り方をするのか想像ができるようになっていた。経験が解像度を高める。

復讐

 土曜日は思い付きで友達を家に呼びスマブラに明け暮れた。小学校以来の付き合いで、スマブラというゲームに上手い/下手の概念があることを知ったのはその人からだったように思う。無論ずっと勝てなくて、大学院生の時に何戦かやってもボコボコに負かされていたのだが、あの時からまた三年経ち、そろそろ勝負になるのではないか……ということで再戦。そんな理由がなくても会いたかったには違いないけれど。数時間フリーで戦って身体を温め、向こうが帰る時間が近づいてきたあたりで最後に二先で勝負を決めることに。

 勝った!ベレス固定+時々ルキナの私に対して、友達は色んなキャラを触っていたというのもあるが、フリーの時点で勝率は6~7割あり、最後のメイン同士の勝負でも勝利。これで勝てなかった人間は全員討した……もう思い残すことはない……。

コーチェラ

 昨日からコーチェラがやっているのでちょこちょこ見ている。TLにはいろんな名前が上がっていたのだけれどやはりダンスミュージックが好きで、Anittaの強烈なバイレファンキとDisclosureの最高の四つ打ちセットが一番良かった。宇多田ヒカルが出るからと見ていた88Risingはどうもわざわざ取り立てて固有のサウンドがあるようには感じず、宇多田ヒカル本人もどうも歌唱パフォーマンスが不完全燃焼で終わった感があった。単にフェスが苦手っぽいという話もあるしそうなのかもしれない。……が、"Automatic"で88Risingのクルーと階段に座り込んで歌っている映像は、アメリカ発のビートでストリートのアジア人が連帯している、というアジア系の音楽シーンの歴史を一発で要約した美しい絵になっていてとても好きだった。
 残りはまあ今の気分ではないなと思った。色々と良いグループはいたのだろうけれど、今は強烈なビートのことしか考えられない。

怨恨

 みけねこさん周りの炎上でいろんな人を恨むことになった。Vを見ている人も、配信者コンテンツに一切触れていない人も、みんな言及するときには嘲笑的なムードで、外側からは愚かな女と愚かな取り巻きと愚かなアンチの愚かな騒動にしか見えないだろうと分かりつつ、それでも私にとっては「愚かな女」では済まされない人物であって、この一週間ほどずっと恨んでいた。
 結局のところ私にとってこのカルチャーは愛着ドリブンの生暖かい何かである。それゆえに一度好きだと感じてしまうと、多少粗相をしたところでその好感度は擦り減らない。そもそも日頃の配信活動で発揮される能力と、その外側で起きる不手際の炎上はだいたいにおいて運用されている能力が全然別であり、アマチュアリズムの塊みたいな文化で社会性なりリスク管理の能力が欠けているというのはある種当たり前であるから。だからみけねこさんがSNS上の迂闊な敵対的発言によって炎上したとしても、それは"配信者としては"特段瑕疵だとは思われない。だいいちこの人にそういった能力がないことなんてホロライブを見ていれば誰でも分かることである。
 そしてこの人は人に自分を愛させる能力がずば抜けていた。「媚びを売れば誰でもできる」と言う人もいるだろうが、媚びを売ったくらいで一年間のスパチャ額世界1位とか7桁の登録者数とかにはそうそう至れるものではない。社会的能力も情緒をコントロールする能力もまるで欠如していながら人に愛されることには優れている、という在り様がとても面白いと思ったし、実際この人の配信は面白かったから、活動を追おうと思うまでに時間はかからなかったし、すぐに好きになった。
 しかし外側からいい加減に言及する人にはこういったディテールも個人的情緒も伝わらないだろう。私が見ている限りではそのコンテンツが好きなのに、同じ原則を共有しているはずなのにどうしてそんな言及ができてしまうのかと不思議でならなかったけれど。かといって問いかけるのももはやばからしく、ただ恨みが積もったとここに書いて終いにする。

聴いたもの

 今日は抜群に良かったものをタイトルだけ並べる。

 これだけ軽く書いておくと、Mille Plateauxの新譜で、"エモ"系ポップミュージックの情緒とサウンドを、構造を崩し融解させた形で不穏なアンビエントの中に取り込み、ギターによるハーシュノイズにまで接続していく、Claire Rousey以後のアンビエント/エクスペリメンタルシーンの質感を総括するような作品。そのうちどこかから言及が出ると踏んでいるが今のところは何もない。

読んだもの

 今日は特になし。

4/10

できたこと

  • 皿洗い
  • 炊飯器のセット
  • 買い物

雑感

遠音

 五日ぶりの日記となるらしい……と思ったが、五日前の日記は書きかけのままVisual Studio Codeで眠っていた。書きあがった部分まで読んでみると、どうも友情の力にも恋愛の力にも馴染めない身として、これら既に確立された力に拠らない何かを求めていたらしい。たぶん『鬱ごはん』みたいなフィクションが一番肌に合うんだろうな、と他人事のように思った。
 過去の日記に綴られた切実な思いを読み返しても、微塵も当時の切実さがよみがえってこないことに驚いている。その当時にテキストに起こすほど燻っていたものも、今読み返せば遠い叫びである。過去の自分は今の自分ではなく、書き出されて自分の頭を離れた思考も、当然ながら今の自分の思考ではない。どうもこのあたりは自分の関心領域に近いなと感じる。

開拓

 蔓延防止措置が解除されて久しく、雪も解けてすっかり春めいてきたということで近場のお店を開拓することにした。昨日は蕎麦を食べ、今日はラーメン屋に行った。どちらも合格点というか、「食べたいな」と思った時に行って欲求を満たすくらいには充分、という感じ。別格においしいとか、その店である必然性は特にないにせよ。喫茶店にもいくつか見当をつけているので、また来週にでも行ってみようと思う。

Flooded

 このところBandcampのリリース量がおかしい。寝る前にメールに全て目を通したはずなのに、朝起きて端末を開いたら70件近く溜まっていたりする。メッセージとかグッズの通知もあるのでそれらを一旦除けておいても、それでも一晩で40件近いリリースがあったりする。こんなのが続くのでは到底やってられない。
 原因はだいたいの場合Bandcamp Fridayである。Bandcamp Fridayではプラットフォーム手数料が引かれず、ユーザーが作品に支払った全額がアーティストのもとに届く。初めは良い試みだと思っていたが、次第にその負の面が見えてくるようになった。みんなその日にリリースするのである。
 それはまあそうなるだろうと思う。みんな少しでも多くのお金を手にしたいのだから。手数料の引かれない日にリリース日を合わせることで、最大のアテンションが得られる時間に最大の利益が出る。Bandcampとしても最大手のインディープラットフォームとしての名が上がるし、これを機に更なるアーティストたちのBandcampへの参入が見込める。Win-Winである。普段一か月で受け取る量のアナウンスを一日で浴びせられるユーザーを除けば。
 別にBandcampに文句はないし、この試みをやめろとも言わない。しかし私の音楽鑑賞生活のリズムは明らかに崩壊している。Bandcamp Fridayでは通常のリリースに加えて過去作品のリイシューもあるから、その日のリリースを一か月かけて崩していけば次の開催までに間に合うということは起こらない。結果として常に着手できていない音源の数が際限なく膨らんでいく。結論は特になく、困ったな、と思う。

 エルデの王になった。長かった……。
 やはりラスボス、というかラダゴンが嫌すぎた。私はエルデンリングをやっているのに、こいつはどうも私にダークソウルを強いてくる感じがある。ここで遺灰を使うと次の戦いは遺灰の体力が半分近くの状態で始めなければならないが、遺灰なしではディレイと回復狩りがだるすぎる。理不尽なボスデザインに理不尽な火力と袋叩きで立ち向かうのがエルデンリングだと理解して戦ってきた身にはしんどいジレンマだった。
 マレニアは三回くらいやったら片付いてしまった。遺灰と一緒に猟犬の長牙でひたすらひるませて血を噴かせ続けるだけのゲーム。水鳥乱舞なる即死技とエオニアの花が全部遺灰に向かっていったのが勝因。モーグも初見で終了。ラスボスが嫌すぎてレベルを上げまくった結果、想定レベルを遥かに上回ってしまったものらしい。後から調べたら血の呪縛が催眠音声と言われていて笑ってしまった。確かに。

聴いたもの

Don Ray - Got To Have Nothing (Mighty Mouse Dub Edit)

mightymousemusic.bandcamp.com

 70年代のディスコバンドDon Rayのアンセムのエディット。華やかなブラスとストリングスによる強烈なアクセント付きのユニゾンが否が応でもこちらを昂らせてくる。
 これは私がいつかのフロアで浴びて一心不乱に踊り狂った曲である。shazamなんて無粋な真似をしている暇はないと、音楽に全てを委ねて踊っていた時間が頭に蘇ってくる。次は私がこれをかけて同じ興奮を人に継承する番だろうか。

読んだもの

v2skcr62.fanbox.cc

3/27

できたこと

  • 洗濯
  • シーツを洗う
  • ランニング
  • 大量にたまったお皿を洗う
  • 洗濯機をセットする
  • インターネット回線の料金を支払う
  • 取り寄せた品を受け取りに行く

雑感

肉ヤガ

 肉じゃがを作った。途中までクックパッドを見て作っていたのだが、途中で手持ちの土井善晴のレシピ本に切り替えたので上手くいったのかは分からない。違いとしては水と日本酒のどちらを使うのかといったところで、今回は水も日本酒も両方入れて30分煮込むことで両方飛ばした。土井善晴は水を全く使わないレシピなのだが、調理過程にも日本酒を煮飛ばす過程がなく、煮込む際には蓋を閉じるように明示してある。それは本当に大丈夫なんだろうか。食べたら酔っ払う肉じゃがなんておちおち食べられない。
 今回はちゃんとおいしくできたので満足。家にある野菜を全て放り込もうとしたらじゃがいものいくつかから芽が出ていた。放っておいたらどうなるのかちょっと興味が出たので今は三角コーナーに放り込んである。燃えるゴミの日が来るのが先か、芽が伸びて花を咲かすのが先か。ちょっと楽しみ。

 三角コーナーには霜がついて一晩でふさふさの綿に巻かれたイチゴなどが蟠っており、微生物たちの楽園と化している。今のところ臭いはしないので、腐臭がするまでは経過を見守ってみようと思う。

肉体性への回帰

 久々にランニングをした。少なくともエルデンリングを購入した2/25からは一度も走っていないので一か月ぶりとなる。
 以前父親と通話した際に「冬明けのランニングは気を付けた方がいい。死ぬぞ」と警告されていて、その時は路面の露出具合が違うと走り方も全然違う、という意味だと思っていたのだが、実際に走ってみたらそういう意味ではないことを身をもって実感した。体力の消費がおかしい。日頃なら息も乱れない距離ですでにそこそこの疲弊がきている。走り方に違いがあるとは思えないのに、なぜか異常に疲れる。帰ってきた頃にはへろへろで、シャワーを浴びている時にはもう立っていられなかった。何だったのだろう。

 何にせよランニングを終えた後には心地よい疲労感と眠気、全身の血行が改善する感覚があり、エクスペリエンスとしてはかなり良かった。次回はもう少し薄着でもいいかもしれない。
 最近改めて人間の肉体性、つまり人間の精神と肉体は切り離せない形で存在していることを実感している。具体的には睡眠不足が続いて土日はずっと眠くて何もできなかったし、昼寝しても眠気が取れなかった。あらゆる意味合いでパフォーマンスをフラットに保とうと思うなら、睡眠を取り、ある程度は運動もしなければならない。ゲームに時間を無際限に捧げていては精神の健康まで失われてしまう。

 今日は早く寝たいのでここまで。

3/21

できたこと

  • 洗濯
  • 勉強(ちょっと)

雑感

エルデンライフ Pt.2

 エルデンリングが終わらない。今日ちょっとプレイしたら総プレイ時間が100時間を超えていた。100時間やって一個目のエンディングに辿り着けないゲームって何なんだ?
 エルデンリングに生活のリソースを全投入しているせいで日々の食事もかなり適当だし、日記も全然書けない(これ自体19日ぶりの日記となるらしい)。その分ツイートばかりが増えていく。日記を書く前に逆戻りしてしまった。
 プレイ状況は以下の通り。

  • 崩れゆくファルム・アズラ到達
  • ミケラの聖樹到達
  • ラニイベント終了
  • フィアイベント完了
  • セレンイベント完了
  • 火山館・パッチイベント(おそらく)完了

 洞窟・地下墓・英雄墓はところどころ抜けがある。祝福だけ灯したものの探索していない場所もいくらかある。フロム初のオープンワールドではしゃいでいたのは分かるが、何もこんなに配置しなくても……と思う。

 今日は火の巨人を倒したのだが、名前や評判から想像されるイメージよりずっと地味で何とも言えない顔になってしまった。モーションはリムグレイブからずっとフィールドにいる巨人と大差ないし、腹から火山弾を無数に噴出する技は適当にローリングしていれば何とかなる(ライカードやアステールで見慣れたパターン)。
 一回の被弾の回復に聖杯瓶が二個要るあたり火力の高さは感じるのだが、こちらの与ダメも相当高かったし(短剣一発で500!)、どうも道中の卑兵に袋叩きにされたり(衝撃波に一個引っ掛かるとだいたいそのまま死ぬ)、黄金樹の化身が二体に分裂したことのストレスが大きすぎたせいで何も感じなかった。結局レベルを上げて遺灰と金サインの仲間で袋叩きにするのが正解ということらしい。マルギットと戦祭りが教えてくれたこと。ちなみにこれは自分がやる分には熱いが敵にやられると青筋が浮かぶ。宿将ニアール、魔術教授ミリアム、お前たちだけは絶対に…………

恩讐

 金曜日に有給を取り、祝日と合わせて四連休を作った。休みは長ければ長いほどいい。
 その一日目、金曜日に父親に連れられ、父親の定年の挨拶(という建前で様子を見)に母方の祖父母に会いに帯広に行った。母は誘ったが来なかった。祖父母と母の関係は完全に終わっているのでこれは予想の範囲内。
 結論から言えば全然元気だった。30分くらい相槌も待たずに遺産相続についての話を延々と聞かされ、面白いといえば面白いのだが正直疲れてしまった。どうも祖父母の子(母と叔母)が祖父母より先に死亡すると相続権が唯一の孫である私に回ってくるらしい。ここに殺人の動機がある。
 帰り際になって、祖母が「お父さんとお母さんに育ててもらった恩返しに孫を見せたいとは思わないの?」と、特段何も考えていないような調子で聞いてきた。
 この人はまさか自分の子が心無い言葉を吐いて10代の私の自尊心を挫き、結果よりも態度を求めて私が学年一位を取り続けようとも人と遊びインターネットに触れることに苦言を呈し、日々家庭に不和をもたらし、家の金銭を詐欺まがいの投機に使い込みながら(うち一つは間違いなく詐欺だった)、私の学業や就職における成功は全て自分の手柄として父や私自身に誇っているとは思わないだろう。母親に負う恩は受けた仇で充分釣り合っているし、そんな一瞬のお披露目のために他人と結婚して子をなすつもりなど毛頭ない。
 ……などと様々なことが思い浮かんだが、そうとは言わずに「全然思わない」と返した。そもそも父親は私が子をもうけることに興味がないし、母親に至っては家を離れた今ではどうでもいい存在でしかない。それよりも大事なものは日々にたくさんある。

聴いたもの

Utada - Exodus

 宇多田ヒカルUtada名義による海外デビューアルバム。帯広に行ったついでに中古CDショップに寄ったところ100円で投げ売りされていた。どうかしている。
 このアルバムと言えばMars VoltaのJon Theodoreが参加しているKremlin Duskのイメージが強かったのだが、他の楽曲も片っ端から名曲だった。いわゆる"R&B"的な楽曲は全然なく、どの曲を聴いてもストイックでユニークなビートが刻まれているのだが、やはり宇多田ヒカルのカラーに染められているところにシンガーの力を感じる。
 特に気に入ったのは"The Workout"と"Wonder 'Bout"。前者はマシンビート剥き出しかつベースが獰猛なダブステップで、逆再生のシンバルの不穏な音が良い味を出している。後者はTimbalandプロデュースのほとんどヒップホップのような浮遊感のあるビート。ほとんどインピーチのビートなのだが、そこはTimbalandらしい独特のカラーがある。

www.cyzo.com

 宇多田ヒカル『BADモード』の配信リリース当日に行われたオンラインライブで『Exodus』(‘04 *Utada名義)からの楽曲が披露され、驚いた方もいるかもしれない。だが、個人的には必然性を感じる選曲でもあった。「Hotel Lobby」「About Me」の2曲は宇多田がプログラミング担当者としてクレジットされた最初期の楽曲たちだ(スパイス・ガールズニュー・オーダー等の仕事で知られるピート・デイヴィスがそれぞれ共同 / アディショナル・プログラミングとして関与)。また、同じくリリース日に公開されたビルボードのインタビュー(「Hikaru Utada Returns, With ‘BAD Mode’ & A Better Sense of Self」)で「キャリアで特に誇りに思っている作品」を訊かれた宇多田は、第一に『Exodus』を挙げている。

 これは傑作だと思ったら宇多田本人もフェイバリットらしい。ちょっと嬉しい。

DJスカイハイ斉藤 - 。..:・ ゚bluespring release party ゚・:..。 shoegaze set (2022.03.19)

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 相互の人が先日のTelematic Vision "bluespring"のリリースパーティーに参加していたので聴いた。最高。
 シューゲイザーというジャンルは門外漢で全然聴き方も分からないままここまで来ているのだが、このミックスではアニソン寄りの選曲を通じてシューゲイザーCocteau Twins的な、恍惚に浸らせる感覚を凄まじい確度で提示しており、一聴して完全に食らってしまった。選曲を通じて音楽性のエッセンスを抽出する、というDJプレイの凄みを久々に感じた。

読んだもの

小川一水 - ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2

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 『アステリズムに花束を』の短編から膨らんだ百合SF小説の第二巻。以下ネタバレを含む。

 話自体はまあ面白かったのだが、なんとなく「こぎれいにまとまっている」という印象が否めない。もっと言えば、百合というか人間同士の関係を描く上で最も重要となる、人間関係における作者のフェチズムを全然感じない。なのでダイオードとテラの絡みもどうにも紋切り型というか、やり尽くされたことをただSFの土壌でやっているという感じがして、百合のはずなのに関係性にフォーカスした場面が一番退屈だった。
 男尊女卑的な社会の構造に対してダイオードが切れる箇所も、どうもTwitterのバズツイを読み上げているような、作品世界から乖離しているような違和感が付き纏うし、さらに言えばダイオードのセリフからはいちいちインターネットの軽薄な語彙を引っ張ってきたような匂いがする。これがこの人の作風ならもう読まなくていいなと思った。

 そして一番大事な作品の結末が残っている。前作がそうだったように、今作もRunawayすなわちファット・ビーチ・ボール星系から脱出したところで幕を閉じる。……のだが、これを受けて読者はどうしたらいいのだろう、と個人的には思った。
 これがもし「今いる場所が嫌なら逃げ出したっていい」というメッセージであるなら、作中で明言されている通り、これからどうなるのか、行った先に何があるのか分からなくとも逃げ出すことを提案するというのはあまりに無責任であるように感じる。逃げ出しても生活は当然続くし、その先が理想郷である保証は当然ない。そうであれば、逃げ出した先が傍らに選んだ人がいる以外の全てが苦しくとも、それを自分の選択として主体的に引き受け、日々を戦っていく姿まで書くのが責任というものだと思う。逃げることだけを賛美するのではTwitterのバズツイと言っていることが変わらない。

 「これはメッセージではない、ただフィクション世界でフィクションの人物がそうしただけ」という読み方もあり得るだろうが、その読み方は私にはできない。この作品世界の設定はどう読んでも「現実の性役割分担を戯画化したもの」であり、この作品世界におけるキャラクターの動きは現実世界での人間のメタファーとなり得る。その中でテラとダイオードの二人だけを完全に現実世界から切り離すというのは通らない。

 そういうわけで、今の私はこの作品の提示するビジョンを読み取りかねている。ここで終わるなら作者はここから先、つまり理想ではなく現実の生活を生きなければならないという領域には着手しなかったということになるし、Runawayを重ねていくシリーズものとなるのならそれはもはや現実の反映とはなりえない。現実の人間がそうやすやすと居場所を変え続けることはできないから。