できたこと
特になし。今日は寝て過ごしていた。
雑感
ダブの拡張領域
昨今のエクスペリメンタル(特にダブアンビエント)シーンで名を上げているBen BondyとSpecial Guest DJが札幌に来ていたので観に行った。箱はPROVOという今回が初めての場所。この場所は一部で極めて評判が悪い(し、後述の理由で私も心証がよくない)ので気乗りしなかったのだが、好きなアーティストが来るというのだから仕方がない。
箱に着いたのはBen Bondyのライブセットが始まる直前のことだったのだが、びっくりすることにフロアにほとんど誰もいなかった……というか誰一人として立っていなかった。あのBen Bondyが来てるのにこんな仕打ちがあるのか……とがっくりしてしまった。札幌には本当にエクスペリメンタルシーンの土壌がない。
さておいてBen Bondyのライブの話をする。代表的なリリースにあるような柔和なアンビエントから始まり、霞みがかりつつ低域の支えが強いダブの音像へと徐々に軸足を移しながら、ダンスホールとIDMの混ざったようなアグレッシブなキックと細かいビートが入れていくところはパーティーの完璧なスターターだった。UKガラージやレゲトンなど現行クラブシーンの多彩なリズムを操りながらも100BPM以下(UKガラージはもう少し速いが、流れで聴いていると自然とハーフステップで踊ってしまう)・ダブの音像というトーンが統一されているため、リズムの変化はそのまま現行ダブサウンドの豊かさへと深く潜り込んでいくような没入感があってとてもよかった。
サポートDJについてはBen Bondyほど面白くはなかったので飛ばす。
90分ほど休憩してSpecial Guest DJのターン。Ben BondyがIDM寄りだったのに対して、Special Guest DJはジャングル。ダブらしい低域の鈍重なグルーヴをキープしながらアーメンブレイクのラフな音像が暴力的に乱打される様には暴力的な快楽がある。
この人はずっとアーメンを打ちっぱなしだったが、終盤にかけてこちらもレゲトンが顔を出す。特にSangre Nuevaの楽曲がプレイされた時にはそのダブと親和性の高いやや水っぽいような音像も含めてテンションがぶち上がった。
二人のプレイはダブの拡張の仕方こそ異なるものの、UKガラージの跳ねるリズムや硬質なテクスチャーが常に底を流れているのが印象的だった。現行エクスペリメンタル/アンビエントシーンはアンビエントと銘打ってはいるものの、やはりクラブシーンの語彙や音像からインスピレーションを大きく受けているということがまざまざと感じられる一夜だった。
余談:ソファに座っている人が普通にiPhoneのカメラでDJを撮影していて驚愕した。Precious Hallを借りてパーティを開く時はフロアでshazamやTwitterを開いたくらいで横からつっついて咎めてくる癖に、自分の箱では全然緩いというのはおかしいのではないか。確かにPrecious Hallでは撮影・録音が禁じられているが、6年通ってきてProvo主催以外のパーティーでスマホを咎められたことなど一度もないし、それ以外のルールについても守られていたり守られていなかったりであいまいな部分が多いのがPrecious Hallである。ろくに通ってもおらず、箱の雰囲気やルールの運用を知らない人が四角四面の自治を敷くのはやめてほしいと思った。
年間ベスト
そろそろ決めたいと思っているがなかなか決まらない。というか単純に数が多すぎる。このままだと年末までに聴き通すことすら不可能そうな……。
M-1
配信があることを知らなかったので途中から観た。どれも面白かった。
個人的ベストはヨネダ2000。文字通りのハンマービートで、「ぺったんこ」に対する合いの手の凄まじくノイジーな声音がノイバウテンみたいな音になっていたのが最高だった。
優勝のウエストランドはその発言内容全てが戯画っぽく、軽薄な悪口を言う人と慎み深い人というキャラクターが設定された上で、言葉のチョイスやトーン、ビジュアル、表情までテクスチャーが精密に作り込んであるのが好き。
あれを悪口と言うのがまず言葉として間違っている。あれはアイロニー。
— 千葉雅也『現代思想入門』発売 (@masayachiba) December 18, 2022
これが的を射ていてその通りだなと思った。あくまでもその言及対象は適切に肯定した上で間接話法的に悪口を言い散らしながらも、その悪口はどういった動機で発されるかという分析的な要素を伝えるコアの部分が観客に明確に伝わっていたように感じた。言語運用が巧みなオズワルド好きとしてはさや香が好きだが、ウエストランドの優勝も全然納得できるし素直にめでたいと思える。ロングコートダディだったらそう思えたかは分からないがこれは好みの問題。